2話 ページ2
考えれば考えるほど怖くなって、ベッドの上から一歩も動けていない状況なのだが、さてどうしたものか。もう涙目。怖い。
思えば最近は不幸なことが続いていたような気もする。でも、全部彼の顔を見れば忘れられた。心の支えだった。そんな彼にさえ振られて、ああ、厄年か。死ぬのかな私。
起床してからかれこれ30分、1人で頭を抱えていた時間は長かったと思う。そして聞こえてきた、恐怖。すこし軽めな足音。こちらに近づいてきている。
「むっ…！？ むりむりむりむり……！！」
無理と連呼するも待ってはくれない。足音はどうやらこの部屋の前まで来て止まっているようだ。
ガチャリと、ドアノブが回った。
ゆっくりと、ドアが開いて、緑の双眼が私を捉えた瞬間に、我慢の限界が来たようだ。
「やっ、やめてぇーー！！！」
思いっきり手元の枕をドアに向かって投げつけた。
幽霊に物理攻撃って効くのかな…私本当に死ぬのかな…。
些細な抵抗は全く効かなかったみたいで、足音は容赦なく近づいてきた。
丸まる私に影がかかって、静かな息遣いが微かに聞こえて、石鹸とシャンプーのいい香りがして、思わず顔を上げた。
「何すんの、おねーさん」
「…は？」
放心状態である。
くっきりはっきり見えているので、幽霊という線は私の中で完全に消された。霊感など皆無に等しい私はそういった類のものは感じたこともないし、急に見えるようになるなんてことはまあないだろう。
よく見てみれば、良く顔の整った幾つか年下であろう少年だった。ぴょこんと跳ねた茶髪に、透き通った深緑の瞳。こいつ、泥棒か？
『何すんの、おねーさん』
この少年が発した言葉が脳で繰り返される。
いや何がおねーさん？ 何すんのじゃなくてあんたが何すんの何してんの人ん家で。てか誰？ だめだ混乱してきた。泥棒にしたって堂々としすぎではないか？ やっぱ殺されるの私。
色んな思考が駆け巡るけれど、特に何の言葉も出てこずただパクパクと魚のように口が動くだけだった。
「あ、あなた誰」
ようやく絞り出した声は自分でもびっくりするほど震えた情けないもので、あまりにもか細い。この私の問いに目の前の泥棒少年(仮)は目を見開いた。
「昨日のこと覚えてないの？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さかもと | 作成日時：2019年12月25日 20時
