1話 ページ1
幽霊とは、本当に存在するのもなのか。
科学的な根拠はないけれど、私は信じていなくもない。もしも自分が幽霊になったとしたら一生取り憑いてやりたい人もいる。今度は絶対に離れてなんかやらない。
何故急にそんなことを言い出したかと言うと、今現在、私は言いようのない恐怖に襲われているから。これは、幽霊によるものなのかもしれないのだ。
バタン。
と、扉の閉まる音で目が覚めた。
視界に入る白や、ベージュ。チクタクと鳴る秒針の音が、私の脳を徐々に覚醒させていく。
ふわりとベッドから香る柔軟剤の匂いと、カーテンの隙間から溢れる春の日差し。いつも必ずやってくる、朝の風景。
ただ、いつもと違うのは、隣に眠っているはずの彼がいないということ。寝起きが悪くて、朝は必ず不機嫌な、大好きで、大好きで、大好きな、大好きだった、彼。手を伸ばせば届いた。自分より幾分か大きな体に抱き付けば寝苦しそうに背中を向けられてしまうけれど、朝のルーティーンの中の大事なひとつであった。
「ごめんな、別れよっか」
昨日、突然告げられた別れの言葉に、泣いて問い詰めて、彼に縋って、そんなことはしなかった。
「いいわよ。私だって別れたいと思ってたの」
微塵も思ってない。大好き。愛してる。
のに、私の口から発せられる言葉は、こんなのばかり。無駄にプライドが高くて、可愛くない女。面倒くさいと思われたくなかった。別れたくない。たったのこの一言も言えやしない。
今更泣いたって遅い。だって、もう彼はいないのだから。そう割り切ったつもりでも、涙が止まらないのは何故だろうか。思い出して泣くなんてみっともない。いくら悔やんでも無駄。わかってる。
.
.
10分程かけてこの過程を終えたのが大体3分前で、今に至るわけだけれども。
お わ か り い た だ け た だ ろ う か 。
彼と別れたのは昨日で、同棲していた私は自然と一人暮らしになるはずで。だけれどもだけれども、私が眼を覚ますきっかけになったのはバタンとドアの閉まる音で。
えっ誰？ お母さん？ 友達？ 彼氏…。うん、傷口を抉るのはやめようやめよう。思い当たる人たちを挙げていくけれど、そもそもこの部屋の合鍵は誰にも渡していない筈だし、私の寝ている隙に誰かが入るなど不可能なのだ。
そして、真っ先に思い浮かんだのが幽霊という存在だった。
あれ、ここ事故物件だっけ？
この小説、ジャンルホラーでしたっけ？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 25人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さかもと | 作成日時：2019年12月25日 20時
