1.無個性じゃなかった【死柄木弔】 (ページ3)

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６０話ページ3

相澤side

「本当にそれだったかい？」

『.......』

警察と会話を重ねていくうちに様子がおかしくなっていった。

そして、今は身体を震わせていた。

何か言いにくいことがあるのか。

それとも、怖くて震えているのか........

おそらく、今の状況から情報を抜き出すのは難しい。

『お、ぼえて、ない、です.......』

彼女の瞳が悲しそうに揺れていた。

「......なるほどね。じゃあ、個性について教えてくれるかな？」

『......わかり、ません。ほとんど、使ったことないので......』

「でも、今回逃げるのに使ってたよね？」

『体が浮いたのは、私の個性じゃないと思います。私の個性はヴィランから逃げるのに、使いました。』

「なるほどね......」

おそらく、彼女の個性はワープ系じゃない。

ワープ系の個性は黒霧が使える。

おそらく、ヴィランが狙ったのは〝特殊な″個性だったからだ。

個性を封じ込めていた、というワードがどうも引っかかる。

ここに来る前に父親にも話を聞いたが、不思議な点がいくつかあった。

熊を退けた。

母親と妹が襲われる現場に居たにも関わらず、彼女だけ生き残った。

しかも、妹の傷は無理やり治されたと医者が推測していた。

彼女は妹の上に乗っかるように倒れていたと報告されていた。

これらの出来事は個性によるものではないか。

そして、記憶がない。

これもおそらく........

「少しいいか。」

『は、はい』

「今までも、今回のように記憶が無くなったことはあるか？」

『........おそらくは』

「いつ頃の記憶がない。」

『えっと......熊に襲われた時？とお母さん達は襲われた時？だと思います......』

やはり、そういうことか。

「イレイザーヘッド、どういうことだ？」

「おそらく、彼女の個性はワープだけじゃない。そして、許容以上の力を使うと記憶をなくす可能性がある。」

「何！？」

この様子じゃ、いくら話を聞いても本当の答えが返ってくるとは限らない。

彼女の個性はあまりに危険だ。

様子からして自分で使いこなせていない。

この個性がヴィラン側に回れば大変なことになりそうだな........