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それぞれのスピーチが終われば、
いよいよお楽しみの演劇が始まる
日も暮れ、テントに吊るされた小さなライトたちが輝き始め、あたりはよりサーカス風の景色に変わっていた
「ナミ…」
ヴィルは観客がいることもかまわず、ナミの前に跪いた。そしてナミの手をとり、彼女を見上げる
「僕のお姫様、今宵はどうか僕を選んでください」
ざわっ、と会場が揺れた
突然のヴィルの告白に誰もが驚いている
「まさか演技の途中の台詞をここで述べるなんて…」とエペルが隣でソワソワしている
ヴィルはかまわず、ナミの指先にキスを落とした
ここには本物のお姫様と王子様がいた
「エペル、はやく台詞を」
「へっ！？」
ヴィルが小声でエペルを促す
もしかしなくとも、もうすでに演技が始まっているのだ
「なんつー人だ…」とエペルが苦い顔をする
ヴィルは待ちきれなかった
はやくナミと演技をしたかったのだ
「お、王子様…私との思い出はお忘れですか！？ あの池で2人で約束をしたばかりじゃありませんか。一緒に舞踏会に行ってくださると！」
しくしく、とエペルがか弱いお姫様を演じる
その泣き顔に王子様がうずく
そうして悪女とヒロインの王子争奪戦が始まった
王子様がどちらかを選ぶ
台本通りならヴィルはエペルを選ぶ
しかし、あまりのナミの迫力にキャラクターの感情ではなく、個人の感情があふれでてしまっ
「悪かった。君がそんなにも僕を愛してくれていたなんて…」
ヴィルはナミを抱き寄せた
「僕が愛しているのは君だけだ」
きっとそれは演出だけの気持ちにではない
＿＿「ナミは私のもの。ルークにも…あのジャガイモたちにも渡さない…」
ヴィルはこの会場にジャガイモたちがいることを知っている。スピーチの際、見えてしまったのだ
そのジャガイモたちに見せつけるよう抱き締め続けた
そのあまりの演技力に誰もがこの物語に吸い込まれる
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作者名：真灯
| 作成日時：2022年9月30日 18時
