1.お餅を焼く ページ32
「オビさんって、妬いたりしなさそうですよね」
「え？何を焼くって？」
唐突に私が言った言葉は微妙に伝わらず、話が噛み合わないことに二人して首を傾げる。「やきもちですよ」「モチ？何それ日本って所の食べ物？」「…いやまあ間違ってはないですけど」あれ？ここにはそういう言葉はないのか？…ハッ、それとも皆心が綺麗でやきもちとかジェラシーとか抱かないってことの表れか…！？
浅ましい心が露見させられたようでぐぬう、と言葉に詰まる。それを見た彼はまた無遠慮な笑い声で「冗談だよ、知ってるってそれくらい」と私をからかっていたことを伝える。な、なんて人だ。
「で？俺が妬かないって言いたいのかい」
「…え？なんか怒ってます？」
「まさかぁ。アンタがどこで何をしてようがアンタの勝手だし、それを縛りつけようとは思ってないよ」
余裕の笑みでそう言われて少しがっかりする。そもそもオビさん自体飄々とした性格で縛られないのだ、自由気ままに生きる彼に私の妬いてくれないか、なんていう考えは通用しない。
お菓子作りの合間にふと思いついたことだったので、しょうがないと言い聞かせて手元に集中する。どう頑張ったって私と彼の思いの大きさは等式ではなく不等式なのだ。私＞オビさん、のように。
因みに今は木の実入りパウンドケーキを作っている。型に流して混んでいるのを彼がじーっとみているのを自覚しつつ零さないように入れる。すると彼が急に口を開いた。
「あ、そういえば」
「ん？」
「アンタさ、前に衛兵達に強請りながら菓子配ってことあったよね」
「強請りながらって…そんな事もありましたね」
ちょっと語弊がある気もするが、細かいことは気にしない。確かあの時は、メイドさんからの策でオビさんにお願いを聞いてもらおうとしていた筈だ。我ながら抱きしめて欲しいなんて、大それたことをしたものだ。その時のことを思い出して少し頬を染める。それをみた彼が「なんか思い出したの？」なんて分かりきっていることを聞いてくるものだから、パウンドケーキの生地をぶん投げてやろうかと思った。
かまどに入れてパウンドケーキが膨らむのをじっと見つめる。暫くするといい香りがしてきた。中に入れている木の実はここらでしか取れないもので、香りがいいと白雪から聞いたので入れてみようと思った次第だ。うん、いい感じ。
今回はただの趣味で作っているので誰かにあげる必要はない。あ、でも後で白雪に差し入れしていこうかな。
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あおぐ(プロフ) - コメント失礼致します。こちらの作品が大好きでもう何度も読み返しています。素敵な作品をありがとうございます…！ (2019年11月10日 17時) (
レス) id: 1e472b0bf1 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - お久しぶりです;;;すみません今少し多忙で返信返せておりませんでした…。実はコメント頂いた日に物語読ませて頂きました(照)感想と、収まりきらない思いをメールで送らせて頂きます…！ (2019年9月12日 21時) (レス) id: d10d29f4b8 (このIDを非表示/違反報告)
ちぎょ(プロフ) - フルリさん» そだ、調子に乗ってちぎょもオビさんの話を書きまして、あとがきでトリップガールへの思いを綴らせていただきました、すみません許可もなくm(__)m これから夏本番ですね、熱中症にお気をつけて！フルリさんの日々を応援しております* これからもよろしくお願いしますっ (2019年7月30日 22時) (レス) id: 142b2f8cf6 (このIDを非表示/違反報告)
ちぎょ(プロフ) - フルリさん» わああ！フルリさんーーーお久しぶりです！！めちゃくちゃ嬉しいなんて日だ！！お元気そうでよかったです(*´∀`) あらためまして、ちぎょは当たって砕けろトリップガールが本当に大好きです。長い間お疲れさまでした、完結ありがとうございます！！ (2019年7月30日 22時) (レス) id: 142b2f8cf6 (このIDを非表示/違反報告)
フルリ(プロフ) - かめさん» コメントありがとうございます！全部読んでいただけてとても嬉しいです！！これで小説は1度区切らせていただきますが、また何かの機会がありましたらよろしくお願いします！ (2019年7月30日 13時) (レス) id: d10d29f4b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フルリ | 作成日時：2018年4月29日 11時
