検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:36,473 hit

2 ページ2

鍵を回して玄関を開ければ、部屋の中は案の定真っ暗だった。

靴を揃えてリビングに向かえば、ソファで毛布を掛けながら寝るAがいて頭を抱えたくなった。
寝るなと言っても寝るのかこいつは。じゃあもう何も出来ないだろ。

『おい、寝るなって言うたやん。おーい』

「んん」

顔にかかっていた髪を耳にかけてやってそう言っても唸るだけで、全く起きる気配はない。
もう一度ため息をついて毛布を剥がすと、ダンゴムシのように身体を丸く縮こませて「さむい」と小さく呟く。

『寒いちゃうわ、起きろ〜』

「やだ」

子供のような彼女にため息を吐いてテーブルの上を見れば、空になったカップラーメンの容器。あと、麦茶が入っているポット。

まさか昼ご飯もこれだけ?
冷蔵庫に野菜炒めやらなんやらを入れて置いたのに、結局食べたのは棚に入っていたカップラーメンだけのようだ。

『はーーー……ほんまバカ……』

これじゃあガチもんのヒキニートじゃないか。
そう思ってまた大きく憂鬱な息を吐く。

寝て起きて食って、また寝て。
こいつはそれの繰り返しだ。俺が養ってなかったら今頃死んでいる。

『起きろ〜〜〜……晩御飯つくるから、ほら。昼夜逆転してまうで』

「もうしてる……」

『そういう問題やない』

無理矢理にAを起こせば、目をシパシパさせてまだ半分寝ているような状態だ。

『風呂入る?』

「うん…」

『お風呂入ってる間に晩御飯つくっとくから、入ってき』

「わかった…」

Aは目を軽く擦ったあと、ふにゃりと顔を綻ばせた。

俺のTシャツを来て、俺がいつもかけている毛布を使って、俺がつくった晩御飯を食べて、俺の給料でなんとか死なずに生きて、

「ありがと、せんら」

きっと俺無しじゃ生きていけない。

3→←1



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (142 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
450人がお気に入り
設定タグ:歌い手 , 浦島坂田船 , センラ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2022年3月17日 0時) (レス) @page14 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
美麗 - 100票目もらいました!wこの話めっちゃ好きですwあ、押した星は一番右ですよ?めっちゃ更新楽しみにしてます!頑張ってください! (2021年3月18日 19時) (レス) id: 898ecf2a8e (このIDを非表示/違反報告)
ねこまる先生。 - この作品はヤバい。面白すぎる。センラさんが少し病み気味なのバチくそ好きですね(hshs)私はログインできないのでお気に入りは出来ませんが…一番右のお星様は押します!更新頑張ってください! (2020年10月31日 20時) (レス) id: 1f53132dc8 (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(名前募集中)(プロフ) - 早くみたすぎる。ニヤニヤしておきます (2020年10月27日 17時) (レス) id: 71be53c310 (このIDを非表示/違反報告)
*茉莉花*@かばやき(プロフ) - 続きが気になります*^^*お気に入り失礼しますね〜 (2020年10月25日 9時) (レス) id: 040119bf1f (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年10月21日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。