初めまして、命の恩人です。【東卍】

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千冬side

"Aが体調崩したから様子見に行って欲しい"

と、一虎クンから連絡があった。

彼女を訪ねてみると、たしかにいつもと違った。

なんというか…ふわふわしている。

漫画を読んでいるときも気が抜けた感じで、いつものAさんからは想像つかない雰囲気。

…ハッ、これがギャップ萌えってやつでは…？


『千冬くん』

「えっ、あ、はい！」

急に名前を呼ばれたかと思うと、彼女から爆弾発言。

『私のこと、ぎゅーって抱きしめてください』

「……え？」

『先輩命令。千冬くんに拒否権はありません」

"いいから早く"と腕を広げるAさん。

「し、失礼します…！」

正面から優しく抱きしめると、ふんわりとシャンプーの香りがする。…めっちゃいい匂い。


『……一虎がね、実家に帰るって。

親御さんとちゃんと向き合えて良かったって思うし、
一虎が決めた事だから私も応援したい。

…だけど、やっぱり寂しい……。』

消え入りそうな声で話してくれたのは、彼女の本音。

俺の背中に回った手は僅かに震えている。

「……」

そんな彼女を、さっきより強い力で抱きしめる。

「寂しくなったら、俺のこと呼んで下さい。

すぐに駆けつけるんで。」



この人は、俺らが思っているよりも強くないんだ。

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