とある××の独白 ページ1
「見届けるといい。渡瀬Aという只の人間を軸とした、この物語を。」
何もない空間で、一人の青年はそう呟いた。
手の中には一冊の本が握られている。
「これは本来はこんな業を背負わなくても良かった筈の唯の人間が、ただ一つの縁と出来事によって、巡り巡って迎えた物語とその一つの結末だ。
まだ終わらない。渡瀬Aの物語は、まだ終わらない。これは一つの区切りの様なものだと思ってくれ。」
青年は全てを知っている。渡瀬Aの全てを。
生まれた時から、
「漸く巡り会えた。この世界にだ。
渡瀬Aが死なずに済む世界に、やっと巡り会えた」
長い旅路だったと青年は呟いた。
青年の足元に転がり、積み上がっているのは渡瀬Aの死体の山。その死体の山に、報われる時がやっと来たよと、青年は語りかけた。
「だから抗え、渡瀬A。この死体の山を無駄にはしてくれるな。
生きろ、生き残れ。そしてこの先も続く困難と苦しみの果てに、お前はそこで漸く生を獲得しろ」
─────だから、決して、俺が目覚めない様に。
ただそれだけを願って、青年は本を抱き締めて眠りに落ちた。
『斜陽の罪人』
「たった一つくらい、ハッピーエンドがあっても構わないだろう？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 505人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あんこ入りのよもぎもち｡(プロフ) - 好きです｡面白いと言うか､綺麗なお話だと思いました｡途中で泣いちゃいました｡何と言うか言葉に出来ません｡神作ってこう言う物を言うんだと思いました｡ (2021年8月11日 4時) (
レス) id: 002ae44b05 (このIDを非表示/違反報告)
佐 - めっちゃよかった……もっと絡みが見たい (2021年3月20日 20時) (レス) id: 7f95d97ba7 (このIDを非表示/違反報告)
6代 - 1日読み尽くして感情移入してしまいました、素敵な作品に出会えて良かったです。 (2020年11月10日 0時) (レス) id: 13ac01a0ba (このIDを非表示/違反報告)
織架 - すげぇ、好きっす。 (2020年10月7日 18時) (レス) id: 379e4fa26b (このIDを非表示/違反報告)
銀(プロフ) - あっ…好きです。 (2020年10月3日 23時) (レス) id: 3d47931e7d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：遥
| 作成日時：2019年10月14日 0時
