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人の気配が微塵も無い横浜の街の中を、渡瀬Aは一人歩いていた。
都心部の方へと歩けば、流石に先程よりは灯はあるが、其れでも、未だこの時間は賑わっている筈の横浜の街は人っ子一人も居ない。
静寂が恐ろしい。Aが素直に感じた感想は、そうだった。
眠らない街である筈の横浜が眠ってしまっている。
夜の管理者であるポートマフィアが根城にしているビルにも灯が点いていない。
以前、彼処に強制的に連れ去られた事があるが、見た目からも分かる通り、あのビルの中は一つ一つが巨大だ。
其れでも灯が見えない。という事は、あの中に人は居ないという事なのだろうかと、Aは思案する。
(森先生や、中也は無事だろうか…其れに、龍も……)
自分と縁や繋がりのある人間の事ばかりを、Aはこんな時も心配になる。
先程から職場の人間や、其れ以外にも友人達にも連絡をしたが、繋がらない。横浜外の家族に異常を伝えようともしたが、何故か圏外表示になってしまい、Aには如何しようも無くなってしまった。
まるでこの横浜だけが隔離されたかの様な感覚に、元から不調気味のAは更に気分が悪くなる。
「一体、何だっていうんだ…」
誰も居ないなら、と横浜を見渡す為に近くにあったビルのエレベーターに乗り込み、最上階から横浜を見下ろす。
先程からAは見ないふりをして居たが、遠くに見えるある建物に目線を定める。
骸砦。
都心部からかなり離れた場所に見える、そう呼ばれた建物。
だが骸砦が存在する場所は、住処を失った者達が辺りを根城にしているため、少なくとも一般人は確実に近寄る事はない。
普段は決して近寄らない場所ではあるが、その骸砦のみは光が見えた。
つまりは、恐らく人が居るのだろうとAは考える。
(丸腰で来てしまった事は後悔しているが…此処まで来てしまったものは仕方がない。中也も太宰も、皆強いのだから屹度無事ではあるだろう)
とうとうAは、頭痛までし出した。
原因不明のこの霧が、如何しようもなく不快だ。
頭が痛い。吐き気とは違う、何かがせり上がってくる感覚。
霧への苛立ちと、友の安全を祈る気力のみでほぼ立っている位には、Aの不調は悪化していた。
だが、Aは気付いていない。
頭痛と共に、小さな小さな声が、ずっとAの事を呼んでいることを。
『つれないな。俺の声が聞こえないとは。』
その頭痛が、内側からその『声』が這い出ようとしているものである事も、勿論知らずに。
『斜陽の罪人』
「たった一つくらい、ハッピーエンドがあっても構わないだろう？」
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あんこ入りのよもぎもち｡(プロフ) - 好きです｡面白いと言うか､綺麗なお話だと思いました｡途中で泣いちゃいました｡何と言うか言葉に出来ません｡神作ってこう言う物を言うんだと思いました｡ (2021年8月11日 4時) (
レス) id: 002ae44b05 (このIDを非表示/違反報告)
佐 - めっちゃよかった……もっと絡みが見たい (2021年3月20日 20時) (レス) id: 7f95d97ba7 (このIDを非表示/違反報告)
6代 - 1日読み尽くして感情移入してしまいました、素敵な作品に出会えて良かったです。 (2020年11月10日 0時) (レス) id: 13ac01a0ba (このIDを非表示/違反報告)
織架 - すげぇ、好きっす。 (2020年10月7日 18時) (レス) id: 379e4fa26b (このIDを非表示/違反報告)
銀(プロフ) - あっ…好きです。 (2020年10月3日 23時) (レス) id: 3d47931e7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：遥
| 作成日時：2019年10月14日 0時
