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「正直なところ、憧れた事は一度あるんですよ。俺にも兄ちゃんか、姉ちゃんが欲しかったなと」

今は面倒を見るのが性に合っているけれど、昔は確かに憧れていたのだ。
年の離れた弟が生まれるまでは俺は一人っ子で。周りの友人は兄弟がいる子が多かった。1人でも退屈せずに、一緒に遊べる兄弟が家に居ることが、羨ましかったのだ。

「……貴方に撫でられた時、俺が長年欲しかった物はきっとこれだったんだなって思ったんです。」

親に撫でられたのなんて、最後はいつだったのだろう。
覚えていないのだ。俺はお兄ちゃんだからちゃんとしなきゃいけなくて。だから、あの日弟が大怪我して以来、より一層しっかりしようと決めて、いつの間にか、もうこんな年齢になってしまって。

「ねえ、織田作さん。貴方に撫でられるの、本当は迚も好きだったんですよ」

照れてしまって上手く云えなかったけれど、本当は迚も嬉しかった。……好きだった。
後悔ばかりが漏れていく。涙と一緒に。貴方の最期は、如何だったのだろう。
きっとその最期を知っているであろう太宰も、居ない。

誰も彼も、俺を置いていく。
それでも貴方は俺に呪いを残した。

『太宰治を置いて行くな』と呪いを残したのだから。

いつ戻ってくるか分からない太宰の為に、待っていろと、云うのだろう。

俺もいってらっしゃいと返したのだ。
……もう、最初から待たなくてはならないのは、決まっていたのだから。

最後にまた手を合わせる。
あの世なんてものがあるのだとしたら、其処からあの人は見てくれているのだろうか。
……見てそうだ。だって、織田作さんの事だ。きっと太宰の事だって心配だろうから、あの人は死んだ後も見守り続けて居そうな気すらする。

潮の匂いがする。
空は、晴天。海は青い。

あの日の様に、空は今日は泣いていなかった。


「織田作さん」


結局云えなかった別れの言葉を、今更になって云う。
若しかしたら、此処には眠っていないかもしれないけれど、それでも、形だけある墓に、ぽつりと呟いた。




「さようなら、織田作さん。



──────御休みなさい。良い夢を」





流れて行く潮の香りと一緒に、一瞬だけ、煙草の匂いが、した気がした。



×××××××

黒の時代編は取り敢えず一応完結の形です。

長い(正直な感想)

特に見なくてもいいやつです→←81



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(プロフ) - 勿論不快にさせた事実は変わりませんが、改めまして女狐呼びは後日修正させていただきます。公式からの呼び名がもし出たらその際はまた変えるかもしれないです。今回はお騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。 (2019年7月28日 1時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ららさん» 妲己、というのもよく考えたら失礼かなと思ったので追記を。前記の通りキャラを貶す意図はなく、クリスティ爵の残酷な面が垣間見える彼女の言葉一つで街を焼ける、といった権力の強さに狐であった妲己のようだ、といった自分の解釈もあります。→ (2019年7月28日 1時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 呼び方の方は後日修正させていただきます。コメントありがとうございました。 (2019年7月27日 23時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 誤解を招くようですが、クリスティ爵はとても好きです。映画で動いて声もついたのは本当にとても嬉しかったです。映画のイメージで「こう言う感じの方かな」と言ったイメージが先走ってしまって申し訳ありません。それと夢主持ち上げ、というよりはその辺の→ (2019年7月27日 23時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ららさん» といった意味で女狐呼びをさせていました。軽率にしてしまい申し訳ありません。情報が少ない方なので、私なりの解釈等も混ざってしまい、呼び方等に不快な思いをさせてしまって申し訳ないです。決してキャラを貶すために使ったものではありませんでした。→ (2019年7月27日 23時) (レス) id: 5776c56060 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年11月13日 18時

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