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誰かの大きな手に撫でられている…おばあちゃんでも、おついちさんでもない。でも不思議と落ち着く……
この手の主は、誰…?
私がゆっくりと目を開けると、赤い瞳の麗しい男の人が私を撫でているのが見えた。
…あれ?このベッド、弟者が寝ていたはずじゃ…?
?「あ、起きた。おはようA」
目を開けた私を見て微笑むその人は、低くてよく通る声で私の名前を呼んだ。なんで私の名前を…?
「えっと、あの…」
?「あっ、ごめん。俺だよ、弟者だよ!魔法でオオカミにされちゃってたけど、ようやく戻れたみたいだ。」
「えっ?!弟者…あなた、人間だったの?」
この麗しい人が弟者…そして魔法…信じ難いことだったが、彼の瞳は弟者のものと同じく綺麗な赤。そしてこの安心感。
きっと彼の言葉は本当なんだろう。
するとガチャ、と扉が開く音がして、おついちさんが中へ入ってきた。
お「あ、Aちゃん、起きたんだね。ごめんね、びっくりしたでしょ?ちょっと話したいことがあるんだ。いいかな?」
私が頷くと、おついちさんは弟者にもう少し寝るように言って私を隣の部屋へ連れ出した。
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今から言うことは驚くことばかりだろうけど、全部本当のことだよ。
まず、弟者くんはね、行方不明になったと言われているこの国の王子様なんだ。
彼のお父上である前の王様が治めていた頃、隣の国が攻めてきてね。なんとか打ち勝つことができたんだけど、まだ幼かった弟者くんが隣国の部隊と一緒にいた魔女に呪いをかけられちゃって。
僕の父は王族専門の医者をしていて、僕も一緒に働いていたんだ。
僕、弟者くんと彼の兄…今の王様の兄者とは仲が良かったからどうにかしてあげたくて頑張ったんだけど、弟者くんを人間に戻す方法は"愛する人からのキス"、ただそれだけで、僕らにはどうすることもできなかった。
王子様がオオカミになったなんて国民に知られたら、弟者くんが辛い思いをしてしまう。
そう思った僕と兄者は、弟者くんがひっそりと、でも幸せな暮らせるように考えたんだ。
それで、森なら誰にもバレないしオオカミの姿でも馴染みやすいかなって思って下見に来たの。
そこで君のお祖母さんに出会った。弟者くんの話をしたら快く家に置いてくれてね。
何が起こるかわからないから、僕も城に通いながらだけど、隣に住まわせて貰うことになったんだ。
それから1年後、君が生まれた。
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作者名:shirö | 作成日時:2018年7月9日 23時