第零話 【序章】 ページ2
ガタンガタン、と道が悪いのか派手な音を立ててバスが揺れる。
60歳くらいの老人の運転手が運転するバスには自分しか乗客がいない。
もうそろそろかな、というところで老人が少ししゃがれた声で次が淺蔵だということを告げる。
「次は〜淺蔵〜…淺蔵〜…。」
よほど田舎なのか車内のアナウンスすら流れない。
バスが止まると老人に切符とお金を渡し、礼を言って降り、バスを見送る。
バスが見えなくなると、特にあてもなく時刻表を見てみたが、バス停の時刻表は何年も前に貼られたものか黄ばんでいて見えず、時刻表の意味をなしていない。
目に映る都会的なものといえばアスファルトと小さく見える家だけだ。
私はスマホや本、着替えが何着かなどが入ったボストンバッグを肩にかけ直した。
「あっつ……。」と呟いて、額に滲んだ汗を拭う。
杏「何故私はこんな所に居るのだろうか……。政府め、許さん。」
そう愚痴るとまるで賛同してくれているかのようにどこかでミーンミンミンとセミの鳴き声がした。
杏「とりあえず、座るか。」
バス停には古びた木のベンチがあった。
屋根もなく、日が容赦なく照りつけていたが、立ったままよりはましだ。
座ると案の定、お尻と太ももが一瞬で熱くなる。
熱さに耐えてポケットから綺麗に折りたたまれた地図を取り出した。
ここから目的地まではおよそ30分位。
結構遠いが、まだ昼の3時だ。時間潰しとしてはいいくらいだろう。
立ち上がると体がいつも以上に重く感じる。
私は新しい就職場所に向かって重い足どりで一歩踏み出したのだった。
ーーーー
それから歩いても歩いても誰にも会わず、人を見つけることすらできない。
兎に角、ボストンバッグが重すぎる。
お茶など行きのバスで飲み干してしまったので、ない。
それでも歩き続けること50分。
目的地の淺蔵神社に着くと若い女性が神社の前を掃除している。
__日の入りの時刻にならなければ本丸には入れない__
あの迷信はどうやら嘘だったようだ。
私は女性の背に声をかけた。
杏「あの」
A「はい?」
振り返った女性を見て私は危うく悲鳴をあげそうになった。
杏「……ッ!!」
A「嗚呼、審神者様ですね。まだ……どうかしましたか?」
杏「あ、あ、貴女……。」
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作者名:神無月 | 作成日時:2019年6月24日 21時