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3時限目終了のチャイムと共に、荷物を持って足早に廊下へと出る。クラス内がうるさすぎて静かに昼食もとれそうにないからだ。
仕方がない、気は進まないが今日は屋上に続く扉がある階段のところで食べよう。別に友達がいないわけではない。いつも昼を共にしている友人はここ数日、熱で学校を欠席しているのだ。
朝もまだ下がらない、とメッセージが届いていた。
目的地である階段の踊り場に差し掛かる。
「おい」
不意に後ろから声がかけられた。
少し威圧感を感じる、腹の底にまで響いてきそうなバリトン。
後ろを振り返ると、噂の渦中の彼が居た。
「…な、なんでしょうか」
なんでこんな所に来ているのだ、さっさと帰ってくれ、と心の中で思いながら、なるべく平穏を装って返事をする。
「この学校の購買はどこにある?」
「は…?」
何故そんなことを聞くのだ。貴方は今、注目の的なのだから、誰に聞いても素直に教えてくれるだろうに。
「俺はお前に聞きたい」
まるで、私の心の中を見透かしたかのようなその言葉に、一筋の汗が頬を伝う。
コイツは昔からこうだ。
何も言っていないのに、人の心を読んだかのように言葉をかけてくる。
そのことを指摘すると彼は決まって、「お前は分かりやすいからな」と言ってくる。
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作者名:にこ† | 作成日時:2020年3月31日 10時