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最後に優しく微笑んでくれた赤い瞳を覚えてる。
でも、彼の名前もあれだけ呼んでいたはずのあだ名すら思い出せない。
なんでなんだろうな。
父の転勤で、再び小学生の時にすごしていた街に帰ってきた。
まだ、あの御神木はあるだろうか。
懐かしさと目新しさを織り交ぜた街の中を歩く。
明日からは新しい高校に通う。
一応、面接も受けて試験と前の高校での成績を鑑みて、合格判定となった。
高校の途中編入は珍しいような、そこそこ頭のいい学校。でも、自称進学校とかそういう訳では無い。それについては安心している。
昔通った道を歩き進め、昔よりも雑草の茂った若干の道だった面影を残す地面を踏みしめる。
奥へ奥へと進んでいけば、その御神木はまだあった。
｢おお、お前残ってたのか…！｣
つい、懐かしさから今は捨てた荒い言葉遣いが蘇る。
その御神木の側へ駆け寄り、ぺたぺたと触る。
Tシャツとジーパン、スニーカー。今の服装を確認してから、足をかける。
｢ここから見る景色が綺麗だったんだよね…っと！｣
少しぎこちなさを残しながらも、昔何度も登った木。体は感覚を覚えているようで、だんだん素早く登れるようになる。
｢よっと…！うわぁー、昔よりもやっぱり、高く感じるなぁ…うんうん…｣
見える街並みを眺める。
太陽はてっぺんよりも少し下がってきている。
しばらくそこに居座ったあと、そろそろ家に帰ろうと慎重に立ち上がる。
｢…やば｣
思いのほか高かったようで、降りようと思うと足がすくむ。
そういえば、あの時落ちた理由を忘れていた。
あの時も全く同じだったのだ。
｢降りれない…｣
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作者名：にこ† | 作成日時：2020年3月31日 10時
