【短編集】素直になりきれない【d!】 (ページ19)

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しかし、中学に上がる頃に私の引越しが決まってしまい、離れることになってしまった。

｢離れたくないなぁ…｣
｢なんや、気色悪い。お前そんなキャラちゃうやろ｣
｢そうだけどさぁ…｣
｢お前のいつもの無駄な元気さはどこいってん。ほら、笑えや｣

そう言って両頬をつまみあげられる。

｢いっ、いひゃいって…！｣
｢ぶっ…！あはははは！！へ、変な顔…くくくっ…！｣
｢どわー！やりやがったな！！仕返しじゃー！｣

彼の手を引き剥がすと、負けてられねえと勢いで飛びつく。

｢うわっ！？｣

そのまま倒れ込み、押し倒してしまった。
自分の影が彼にかかる。

｢…錦？｣

目頭が熱くなる。ああ、ほんと弱っちいな。

｢離れたくないよ…｣

一滴、温かさを持った雫が彼の頬に落ちる。
全くと、呆れたように息をつく彼の手が頬に触れる。

｢だーかーら、そんな泣くことないやろ。どうせまた、どこかで偶然出会えるやろ｣
｢だってぇ…！｣
｢お前、俺と初めて会った日、忘れたんか？｣
｢…この木の前で、お前の上に落っこちた…｣
｢そうそう。そんな出会い方して、友だちになったんやで？普通ありえんやろ。だから、俺たちなら大丈夫やって｣
｢うぅ、ありがと――｣