【短編集】素直になりきれない【d!】 (ページ21)

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｢降りれない…｣

どうしようと、思考を巡らせていると下から、ザリと足音が聞こえる。

｢っ！？｣

思わず動揺してしまい、足を滑らす。
やばいやばい、流石に今回は打撲くらいじゃ済まないぞ…！
落ちながら視界に入った黒髪の人の姿。

｢あっー！危なーい！｣
｢へ｣

その人は突然のことに驚きこちらを見上げたまま、固まってしまう。
ぐっと来たる衝撃に備えて、身を固くする。
恐怖から思わず目をつぶる。
ドンとした衝撃がした後、地面にぶつかる、という感覚はなかった。

｢…え｣
｢…は、あ、アンタ何やってんねん！！！？？アホか！！？｣

目を開けると、その人に上手いこと受け止められたようで、地面とギリギリのところで止まっていた。
突然のことに困惑しながらも、慌てて立ち上がる。

｢ごっ、ごめんなさい！！落ちたのはわざとじゃなくて…！｣
｢いや、そういうことちゃうわ！？アホか！！？なんで木の上に登ってんねん！！怪我しとらんか！？｣

くわっと勢いよく問い詰めてくる、その人はこちらの心配をしてくれている。
そこでようやく、その人の姿をマジマジと見る。
背は高くがっしりとした体格、軽く七三に別れた黒髪、黒縁眼鏡、そしてその奥には血のように真っ赤な瞳。

｢あ―｣
｢は…？｣

｢なあ、＿＿｣
｢んー、どした。錦｣
｢いや、どっちだと思ってる？｣
｢はあ？何がや｣
｢なんでもない。…もしさ｣
｢…？｣
｢もし、わ、俺が隠し事してても、変わっても、友達でいてくれる？ねえ―｣

｢―ト、トントン｣