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｢―ト、トントン｣
｢は、なんで、なんでアンタがその名前…｣
思い出した。
彼のあだ名。名前。小学生だった時の彼の声。
｢やっぱり！ほ、ほら！覚えてる！？小学生の時に、この木の前で会った！｣
彼の肩を掴み、勢いよく迫っていくと彼は少し身を引きながらも、頭の中の引き出しを開けていく。
そして、ひとつの答えを導き出したようで、眉間に皺を寄せながらコチラをまじまじと見つめる。
｢お前…錦…？錦A…なのか？｣
｢そう！錦A！覚えててくれたんだ！｣
｢そりゃあ…、あんな衝撃的な出会い方して忘れる方がおかしいやろ…｣
肩を掴む私の手を払いのけると、少し訝しげな顔をする。
まるで、まだ納得できない、とでも言いたそうに。
｢そりゃそうだよね…ははは…｣
｢…なんでここにおるん…？引越してそれから…｣
｢うん、また父がこっちに転勤することになってさ。戻ってきたわけ、で、暇つぶしに探索してたんだけど…懐かしくなって木に登ってたら…｣
｢昔みたいに降りれなくなって、足を滑らせた、と…｣
｢はい…｣
面目ないと顔を背けながら頷くと、彼はそれが面白かったようで吹き出し笑う。
あ、笑い方変わらないな。
｢…ふふ、でも、それホンマか？まだ、全然信じられんのやけど｣
｢じゃあ、私しか知らないトントンの秘密でも言おうか？｣
｢やめてクレメンス｣
｢冗談冗談、嘘だって｣
にひひ、と悪戯そうに笑ってみせる。
すると、少しだけ彼の目が優しくなった。
｢変わらへんな｣
｢お互い様だって｣
それから、木の根元に座り込んでしばらく再会の余韻を味わっていた。
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作者名：にこ† | 作成日時：2020年3月31日 10時
