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｢ねぇ｣
｢なんだ｣
｢私さ、昔ここで一人の男の子と会ったんだよね｣
｢なに急に昔話してんねん…｣
｢いいから、聞いてよ。それでね、その男の子がやけに気になって声をかけた訳よ。『何してんの』って。まあ、面識なんてなくて初めて出会ったわけだから相手も『誰？』って聞いてくるわけ｣
勝手に自分のペースに巻き込んで話し始めると、彼は大人しくその話を聞き始めた。意外だ。
そして、それを了承と受け取った私は、そのまま話を続けることにした。
｢だから、私は名前を言ってからもう1回そいつに何してるのか尋ねたわけ。そしたらそいつ、急に変な質問してきたんだよね。で、なんだコイツって思いながらも、質問に答えたの。そしたらなんか変なスイッチが入って、急に語りだしてさ。呆気にとられてその話を一応は聞いてたんだけどさ、小難しくて幼いし…、まあ、その子も同い年だったからお互いなんだけど、やけに詳しくて…、でも、その楽しそうに話すそいつのコロコロ変わる表情が面白くってさ、最後まで話聞いていたんだよね｣
｢それで…？｣
｢んーと、最後まで話し終えてからやっと、自分の名前を教えてくれたんだよね。まあ、そのあと結局、あだ名で呼び合うから本名なんてほとんど呼ばなかったけど｣
ちらりと横目で隣の奴の顔を見る。
彼はこちらを見ていない。少し顔を俯かせて、腕を組みながら、しかし確実にこちらの言葉に耳を傾けてくれている。
溶けてきたアイスが手に落ちる。
話しながらアイスを食べるって意外と難しい。
｢それから、すごい仲良くなって、毎日遊んだんだ。その後のそばにいるのが楽しくって、なんだか心地よくて。でも、喧嘩しちゃった。なんだっけ、確か理由は…｣
｢嘘が下手くそか下手くそじゃないか｣
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作者名：にこ† | 作成日時：2020年3月31日 10時
