絶交した黒と 結 ページ17
驚いてもう一度彼を見る。今度は彼の方にしっかりと顔を向けて。
すると、彼もこちらを見ていた。
灰色の瞳に私の顔が映る。
｢ついでに言うと、そいつがお前にした質問はこうだ。『如何にこちらの兵力を減らさずに、短期間で相手を制圧するにはどうするべきだと思う？』｣
｢…うん、正解｣
｢…そうか。なるほど、そうかそうか…｣
まるで全てのピースが綺麗にハマり始めたかのように、きっと彼の頭の中で全てのことに合点が行きはじめているのだろう。
｢ねえ―｣
｢―幼い頃、男の子だと思っていた子が実は女の子だったら、その子のこと嫌いになる？ねえ、グルッペン｣
｢…答えはノーだ｣
やけに煩かったセミの鳴き声が、今は静かに聞こえる。
私の耳には、彼の特徴的な低音だけが響いている。
｢言っただろう。そんなことはどうでもいい、と。一緒に居るだけで良かったんだ｣
｢うん、ありがと｣
最後の一口になっていたアイスが、溶けてペシャリと地面に落ちる。勿体ないことをしてしまった。
｢ごめんね、グルッペン｣
｢俺の方こそ、意地を張っしまっていた、スマン｣
｢あのさ、また、友だちになってくれる？｣
｢ああ、勿論だ。A｣
まだ、もう少し私は自分の心には素直になれそうにない。でも、またあの心地の良い日々が取り戻せることが、今は素直に嬉しい。
｢…しかし、お前が女だったとは…｣
｢だから、私言ったじゃん｣
｢はあ？あんな遠回しな言い方されたら、普通気付かねぇわ？！｣
｢アホなの！？勉強出来るくせにそういう所、ホントに鈍感かよ！｣
｢うるせぇ！！だって、あん時のお前が嫌いになるとか、ようわからんこと抜かすからそっちに気いとられたんやって！！｣
｢ほんとバカ！そういう所直さないと一生彼女できないぞ！｣
｢おま…っ！お前だって、その男勝りなところ直さねぇと一生恋人できへんやろ！男に逃げられんぞ！！｣
｢ゔっ…い、痛いところ突かれた…｣
｢…クッ…ふ…｣
｢んふふ…｣
堪えきれなくなって、同時に吹き出してしまう。
まさかそうそう口喧嘩をするとは思ってはいなかったが、今は、それすらも心地よい。
もう少し、この心地良い居場所に居させてくれ。
いつか、素直になれるように。
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作者名：にこ† | 作成日時：2020年3月31日 10時
