一人目 ページ42
相手の言葉が終わる瞬間、腰のナイフを抜き首元めがけて切っ先を向ける。
しかし、刃を掴まれ攻撃阻まれる。ナイフに相手の血がつたい落ちる。
｢実に威勢がいい。それに、素早さに狙い…貴女…軍人ですか？｣
｢…それは否定させてもらいます｣
｢おや、でもこんな一般人もなかなかいないでしょうにねぇ…。やはり隠してますねぇ…嘘は下手ですか？｣
笑顔を崩さず、そう告げる。楽しんでいるんだ、そう確信する。
ならば、とウエストポーチを探り小さめの筒をそっと取り出す。
片手で器用にそれに付いているピンを抜く。
｢…私にもやらなきゃいけないことがあるんでっ…！｣
そして思い切り床に投付ける。
カンと金属の音が響くと同時に、辺りに白い煙が充満する。
相手のみぞおちがあるであろう場所を、思い切り蹴りつける。呻くような声と共に襟を掴む力が緩み、抜け出すことが出来た。
そのまま、階段を駆け上がり少し離れた部屋に入り込む。
｢はぁ…はぁ…。に、逃げきれた…｣
荒れた呼吸を整えるように深呼吸する。
ゆっくり息を吐き出し部屋の中を見渡す。
｢あ、…貴女は…？｣
壁際にあるベッドの上で丸くなっている少女と目が合う。
金色のセミロングの髪、青色の瞳が涙でうるんでいる。
｢私は…私は貴女たち家族を助けに来たの。我々軍の新入りだよ｣
怖がらせないようにと笑顔で話しかける。
そっと手を伸ばすと、｢本当…？｣と問われる。
｢はい、今、コネシマさんが犯人見つけてくれてるから。それにグルッペンさんに援軍も送って貰ってる。安心して｣
そう言うと少女はこちらの手をそっととる。
｢ところで…、貴女はなぜ家に…？この時間は学校があるはずでは？｣
｢今日は…、体調が優れなくて…休ませていただいていたの…｣
そう言うと、小さく咳をする。
そう言われてみると少し頬が赤い。熱もあるのだろうか。
｢そっか…。あと、今この家には誰がいる？それと、どこに居そうか分かりますか？｣
｢今日は、お祖母様とお母様、それとお父様の3人だけです。兄は、学校へ行かれています。今の居場所までは…。でも、爆発が2階の応接間の方から聞こえてきたので、もしかしたら…お、お父様が巻き込まれているかも…｣
｢ありがとう。それだけで大丈夫ですよ｣
段々と表情が暗くなっていく少女を見て、話を止める。嫌な想像が働いてしまったのだろう。
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月27日 7時
