声の正体 ページ33
『せやぞ、シャオロン…！！』
｢！？｣
｢ロッ…｣
急にインカムから聞こえてきた声に驚く。
シャオロンは、バレたかとでも言いたげな表情をしている。そして、私の上から急いで飛び降りる。
私は体を起こし背中についた砂埃を払い落とす。
『グルッペンが探してたから、俺の方からも探してみれば…、お、お前何しとんねん…』
怒りと動揺が混じりあったような声。
｢いやいや？俺、Aちゃんと手合わせしてただけやで？色々、経験積んどいた方がええかなと思って…｣
『いや、俺はお前が遊んでるのを見たぞ…。確信犯やろ』
静かに怒りを顕にしていくロボロの声に私は押黙ることしか出来ない。
目の前のシャオロンは、焦りながらもどこか楽しそうに言い訳を並べていく。まるでよくある出来事のひとつのようだ。
『取り敢えずもうええわ。とにかくグルッペンが呼んどるから、急いでいくように。ええな』
｢面倒くさ…。ま、とりあえず行くか…｣
シャオロンはため息をひとつつくと、立ち上がり膝についた砂埃を払う。
こちらをちらりと見ると、再び目の前にしゃがみ込んだ。
｢ま、いい経験にはなったやろ？俺も楽しめたわ、ありがとな｣
そう言って、ぽんと頭を撫でられる。
優しくそして太陽のように眩しい笑顔で笑う彼。ニカッという効果音が似合う、そんな笑顔。
そんな彼を見て、悪くない、なんて思ってしまう私は軽いだろうか。
｢次はちゃんと手加減してくださいね？｣
だから、ちょっと意地悪を込めてそう言い返してみた。
それを聞いた彼は目をぱちくりとさせ、頬を掻きながら｢頑張るわ｣と言って再び立ち上がった。
インカムからは、ロボロがシャオロンを急かす声が聞こえてくる。その声に悪態をつきながらも素直に訓練場を出て行く。
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月27日 7時
