詐欺師2 ページ3
｢…はい？｣
突然の言葉に理解が追いつかず聞き返す。
｢ですから、例えば交友関係とか、人柄とか。そういった類です｣
交友関係、という言葉にドキリとする。
この人、人の地雷でも踏み抜くつもりか。
｢いや、そんな、…普通だと思いますよ｣
｢いやいや、以前言ってたじゃないですか。どんな感じだったのかなって、気になっただけですよ｣
顔色一つ変えずに聞いてくるチーノ。
｢目のせいで人と関わりが少ないって。俺と話をするときも、あんまり目を合わせてくれないですし｣
そう言ってずい、と身を乗り出してくる。
びくり、と肩が震える。
｢鬱先生だって言ってたじゃないですか、ここにはいろんな目の人がいるんだから、気にするな。むしろ誇れ、って｣
｢それは…｣
｢分かりますよ。そりゃ口で言うのは簡単ですもんね。実際トラウマになってる側からしたら、それを乗り越えるのが例え10センチのハードルだったとしても、またげませんもん｣
思っていることをほとんど言い当ててくる。
人付き合いが今まで少なかった私からすれば、今は、割と素で話せている方だ。
今までは取り繕いながら話さなければならず、誰かと喋るというのは苦でしかなかった。
最近は純粋に話すことを楽しめている時がある。ふとした瞬間にそう感じるのだ。
｢それに多分、Aさん、俺みたいなタイプ苦手そうですよね。だから、他のエーミールさんとかトントンさんみたいに目を合わせてくれないんですよね？｣
｢う…｣
バレてる。
彼の言うようにエーミールやトントンは雰囲気からか、私から目を見て話していることが多い。
それに彼らの目が綺麗だったり不思議だったりでつい見てしまうというのもある。
全く、不思議である。
人と目を合わすのは苦手なのに、彼らの目はつい見てしまうのだから。
｢それにしても、エーミールさんや鬱先生は置いておくとして、トントンさんやゾムさんがあなたに興味を持つのは驚きましたねぇ。彼らはどちらかといえば厳しい方なんですけど。特にトントンさんは｣
そう言うとさらに顔を近づけてくる。
視線から逃れようと顔を背けると、頬を挟まれ無理やり目を合わせてくる。
瓶底メガネの奥から、山吹色が煌めいている。
まるで、私の隠した言葉を読み取ろうとするかのように、爛々と輝いている。
｢一体どうやって彼らを籠絡したんです？｣
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月27日 7時
