実践 ページ18
そう言われ、戸惑いつつもナイフを構えてみる。
実践と言われてもだ。私にできる気がしない。
しかもこちらが持たされたのは本物だ。
当たれば普通に怪我をしてしまう。
あちらはプロだから、きっと全て躱すことが出来るのだろうけど、万が一ということもある。
ザリ…と1歩足を後ろに下げる。
｢来ないならこっちから行くで｣
そう言った瞬間ゾムが駆け出してくる。
｢…っ！｣
一気に詰められた間合いから攻撃が繰り出される。
身体を後ろに逸らして間一髪避ける。
ゴム製とはいえ当たったら普通に痛いだろう。
｢やるやん｣
空振りに終わった右腕をそのまま後ろに下げるように振る。
｢ちょっ…！｣
咄嗟にナイフで攻撃を逸らす。
しかしゾムの力が強く逸らした反動で、手が左側へと弾かれる。
ゾムは逸らされたことも特に気にせず、そのままパンチを繰り出すかのようにナイフを振る。
顔を逸らし左手でゾムの腕を弾く。
腹部に隙ができた。
ここだ！
そう思い右手のナイフを振る。
｢良いコースやけど…！｣
しかしナイフは当たる直前で彼の左手で手首を掴まれ止められる。
そのまま左手も弾かれ、ナイフが首筋に当てられる。
｢惜しい。残念やったな｣
はあ、と息が漏れる。
たった数手。それだけだが息が切れる。
｢君、筋いいなぁ…！ええやんええやん。このまま一緒に戦闘員やろうや？な？｣
手を離しどこか嬉しそうにはしゃぐゾム。
｢いや無理ですって…！流石にそこまでは出来ないです…｣
｢えぇ〜、鍛えればそれなりに殺れると思うで？｣
フードと髪の毛に隠れて見えないが、なんとなく彼の瞳は潤んでいる、そう感じる声色だ。
｢殺れないですって…｣
｢うーん、まあ、ええわ…。次、行こか｣
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月27日 7時
