強引な一手 ページ12
｢全っ然剥がれないんですけど…｣
どんなに人通りのあるところに居てもずっと感じる視線に、だんだん気分も悪くなってくる。
｢うーん…、せや。ちょっとこっちおいで｣
そう言って私の肩に手を回し、路地裏に逸れる。
高い建物の隙間ということもあり薄暗い。
少し奥まで歩くと壁際に追いやられる。頭の左上に彼の手がトン、と壁につく。あの、これやばいのでは。
｢あの…鬱先せ―｣
｢ちょっと大人しくしとってな｣
顔を上げるとすぐそばまで迫っている顔。
よく見れば、かっこいい、と言える顔が近くにあった。
長い前髪に隠れた右目もよく見える。
その瞳はまるで深海のように深い、しかしどこか静けさを感じる藍色で。
海に潜ったらこんな色が見えるのだろうか。
そんな風に考えてしまう。
｢…あ｣
その瞬間、遠ざかるヒールの音が耳に入ってくる。
それと同時に、今まで感じていた視線が剥がれる。
｢…行ったな｣
スっと顔が離れ後ろを振り返る鬱先生。
｢いやぁ、すまんな。こうした方がいっちゃん早いかなぁ思って…｣
謝罪の言葉を述べながら、改めてこちらを見た鬱先生の動きが一瞬止まる。
｢…ふふっ…、顔真っ赤やな。慣れへんのやろ？｣
｢なっ…！？いやいや、誰だってあんなことされたら赤くなりますよ…？！｣
｢可愛ええなぁ…そんな顔されたらホンマにキスしたくなってまうやん｣
その言葉にぐわっと顔周りが熱くなるのをかんじる。
今度は恥ずかしさと言うよりも、怒りの方が勝っている気がする。
｢バっ…馬鹿なんじゃないですか…？！｣
｢アホって言ってくれる方がええわぁ｣
｢嫌です！！！｣
｢ちゅめたい…まあ、そんなに怒らんといてや？な？｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 66人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月27日 7時
