話が逸れて ページ38
｢それほどまでに平和なんです。今も本当はこれが夢で目が覚めたらいつもの生活に戻るんじゃないかって、思うんです。でもいつも目が覚めても天井はまだ見慣れないもので、周りの音も景色もまるでテレビの向こうの
初めに話そうと思っていたこととは、言葉を紡げば紡ぐほど逸れていく。しかし、溢れた言葉が止まらない。
｢帰りたいのに帰りたくないんです｣
｢なら、居たらええんちゃう｣
｢え？｣
予想外の言葉に驚いた。なんで。
｢結局、アンタが敵か味方かは分からんけど、今のアンタの話に嘘は感じなかった。いつ裏切るか裏切らないかなんてわからんけど、居たいなら居ればええやん。もし、アンタが敵だったらそん時は殺すだけやからな｣
そう言って煙を吐く。
白い煙が風に乗って空へ上がっていく。
｢…コネシマさんって意外と優しいんですね｣
｢そりゃ、俺にだって心くらいあるからな｣
｢いや、お前に心はないやろ｣
｢なんやと！？｣
｢ひあっ？！｣
後ろからピトリと冷たいものが頬に当てられ、びっくりする。
その主を見るとシャオロンがニヤニヤとしながら立っていた。
｢めっちゃ驚くやんか｣
｢…今の話聞いてました？｣
ボトルに入ったお茶を受け取りながら尋ねる。
｢ん？なんか話してたんか？コネシマの心ある発言しか聞いてなかったわ。何話してたん？｣
｢私の身の上話みたいなものです｣
｢お前には関係あらへん｣
｢なんや、仲間外れみたいで寂しいわ。俺にも教えてくれよ〜｣
何故か後ろからハグされるような形になる。
｢今思うと恥ずかしいので遠慮します…｣
｢ていうか、なんやお前、Aちゃんのこと警戒しとったくせに、何そんなに話しとんのや。しかもそんなプライベートな…｣
｢勝手にこいつが話始めただけやって！｣
｢えっ！？いや、いや、確かに何故か話が逸れてそうなったのは私ですけど、話を振ってきたのはコネシマさんでしょう…！？｣
何、まず話を始めたのが私、みたいに言ってるんだこの人。
突然そんな話し始めたらただの変な人じゃないか。
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月3日 14時
