つい語ってしまった ページ37
｢なあ｣
ふいに隣からそう声を掛けられる。
その声の主を見ると、走っていったシャオロンの方を見つめている。
ポケットからタバコを取り出し、カチリと火をつける。
｢お前は本当にここじゃない所から来たんか？｣
｢え｣
初めての自己紹介の時に確か、私がこことは違うところから来たことを話した。
｢それとも本当は嘘で、お前が上手く話を作ってるだけなんか？｣
｢…こう言っても信じてもらえないとは思いますけど、私が言ったことは本当ですよ｣
｢ふぅん…、じゃあアンタの国について教えてくれや｣
｢へ？｣
その何気ない一言に私は驚いてしまう。
｢戦争のない国なんやろ？そんな平和なところがあるなら聞いてみたいやん。ここは当たり前のように戦争があるんやから｣
だって興味ないと思ってた。
…いや、違う。これは、私が話すか話せないかでやましい事がないか見極めようとしているんだ。
じゃあ、包み隠さず話すべきなのだ。
｢分かりました…。…前も言いましたが私の国は日本と言います。四季があり、それぞれの季節でしか見れない景色があります。今は戦争はない平和な国ですが、ほんの約70年ほど前までは戦争をしていました。第二次世界大戦と言って大きな戦争です。私のおばあちゃんから何度か話を聞きました。ただ、私には遠いお話で戦争をしていたなんて実感はありません｣
ポツリ、ポツリと話す私の言葉に、ただ耳を傾けるコネシマ。
タバコの煙がこちらにも漂ってくる。
｢でも、戦争はなくなっていない。それは毎日テレビで見る世界のニュースを見ると実感しますか。そして、日本でも本当にあったんだなって。それに、近くの国から不定期でミサイルが発射されたというニュースも見ます。もしかしたらまたいつか戦争が起こるんじゃないかって、そんなふうにも感じます｣
まるで相槌のようにカチリと音がする。
｢ただ平和ボケしてるのでしょうね。そして、またかなんて思ってしまっているからか、ミサイルが発射されても余程のことがない限りいつものように、働いたり学校に行ったりしてるんですよ。私たち。きっとここじゃ考えられないでしょうね？｣
そう言うと｢せやな｣と一言返ってくる。
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月3日 14時
