見回り ページ35
そして、グルッペンに言われた時間になり、正面玄関へと向かう。
吹き抜けのエントランスに着くと、いつもの赤いニット帽を被ったシャオロンとサッカーユニフォームのコネシマが立っていた。
｢おっ！Aちゃん！グルッペンから聞いたで？見回り同行するんやろ？｣
｢はい。すみません、お世話になります｣
そう言って、頭を下げる。
｢あんま、足は引っ張らんといてや｣
｢お前は黙ってろシッマ。Aちゃん、ホンマにこいつのこと気にせんくてええからな？こいつ心がないだけやから｣
｢あるわ！！｣
｢いやいやいやいや、今の言葉のどこに心が有るっちゅうねん、耳腐っとんちゃうか？？｣
｢あん？？腐っとらんわ、アホか？｣
｢あ…あの…｣
2人の言い争いが始まってしまい、どうにも出来ずにワタワタとしていると、たまたま通り掛かったトントンに怒鳴られ大人しくなった。
そして、3人で街へと繰り出した。
｢基本的には日替わりで見回りしとるんやけど、今、他の奴らが結構忙しいから、今週は俺ら2人で固定なんや｣
｢へぇ｣
街を歩きながら、シャオロンが見回りについて説明してくれる。
｢んで、街に異常がないか見つつ市民の生活の様子を見る。困ってる人がいれば手を貸したりもするんや｣
街の活性化も目的に含まれてるんやで、と付け足す。
｢あとは…｣
そう言うと少し表情を暗くするシャオロン。
｢観光客の排除｣
その言葉に、あの日、トントンと初めてあった時そして、ゾムと遭遇した時の出来事を思い出す。
命懸けなのだ。
彼らは軍人。私は一般人。これなら出来るのでは、と思った過去の私を殴りたい。
｢まあ、もし遭遇した時は君のことは俺らが守ったるから、気にせんくてええんやで｣
表情を暗くした私を見て、パタパタと手を振りながらそう言ってくれる。
｢俺も含まれとんのか｣
そう言うコネシマはどこか他人事のようで。
｢何言っとんのや、当たり前やろ。グルさんから頼まれとるやろうが｣
｢いや、俺はまだコイツのこと認めてへんから｣
ズバッと言われた言葉に、心がズキリとする。
｢お前な、そういうことは普通本人がいる前でせぇへんぞ、ほんまアホちゃうか？｣
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月3日 14時
