第二十三話 ページ24
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「あ、今日満月ですね」
部屋中の掃除を終えたら、気がつけばすっかり夜になっていた。外に出て夜風にぶるると身を震わせながら空を見上げればそこには存在感を一ヶ月で一番主張している月がいた。
「ホントだ、でけぇな」
頭の真上ではなく、屋根と屋根の間に見える月はどこかぼんやりと赤みを帯びていて、大きい。トムラさんみたいだな、と思った。理由なんてないけど、トムラさんみたい。
「本当にいいんですか、送ってもらっちゃって」
「お前一人だと絶対犯罪に巻き込まれるだろ、誘拐とか」
それ、トムラさんと黒霧さんも言ってた気がする。私はちょっと口を尖らせるけれど、真っ暗な外を見て私の中の勇敢な心はすっかり萎んだ。カエルの声と私の足音しかしない真っ暗闇、怖いもの。
私が歩き出すと、それに合わせて荼毘さんも並んで歩き出した。長い手足がゆっくりと動く。そのさまにもトムラさんのことを思い出した。
「すげぇな、家政婦って」
「ん？ どうしてですか？」
「手際良いし、知識あるし、冷静だから」
あぁ、と私は天を仰いだ。それは私が家政婦だから、と言うよりも、私が私だからだ。
「慣れてますから」
すげぇ、ともう一度呟いた。私はそれをつとめて素直に聞こうと心がけた。
「いつでもお困りでしたら呼んでください。私で良ければお手伝いしますよ！」
私の素っ頓狂に力んだ言葉に対して、荼毘さんは素直に縦に頷いた。月をぼんやりとその目に映して、瞬きをするたびにその像がほろろと崩れるさまがなんとも危うさを帯ていて、私は声をかけようか迷い、結局飲み込んだ。
夜は雄弁だ。会話が無くても事足りるくらいに音で満ちている。私達はそれを介して、まるでカフェで話し込む友人のように、弾んだ話をしている気分だった。
家が見えて、私がここまでで大丈夫ですと言うと、荼毘さんは片手を上げた。
「じゃあな、ポンコツ」
「はい。わざわざありがとうございました」
私が頭を下げても、荼毘さんは私の姿をその場で見送ってくれていた。家に入る間際、もう一度こっそり盗み見たら、まだその場で私の方を見守る荼毘さんがいて、ほわほわと胸があたたかくなった。
怖い、というイメージを持っていたけれど、それだけじゃない。荼毘さんという人間は、きっと、それだけじゃないのだ。
当たり前だけど忘れてしまいそう。
それに気がつけて、本当に良かった。
私は荼毘さんに小さく手を振って、玄関のドアを開けた。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
