第二十二話 ページ23
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「時々こうしちまうんだよなぁ」
荼毘さんは私が食器の破片を回収するのを隣で手伝いながら、小さくそう呟いた。こう、とはこの部屋の惨状のことを指しているのだろう。荼毘さんは自分の部屋を、時折こうして衝動的にめちゃめちゃにしてしまうらしい。
「物が割れるとき、俺ん中のなにかも一緒に壊れて、スッキリするんだよ」
またもや独り言のように呟く。私は荼毘さんの顔をそっとうかがった。伏せられた睫毛、陰る瞳の色により、幼い頃の記憶が曖昧に蘇るように感じた。
まるで真っ暗な闇の中でなすすべが無い子どものような。不安を限界まで凝縮した感情がちらりと蘇る。輪郭もないようなぼんやりとした幼い記憶だ。胸がひりひりして思わずお皿を握る手に力がこもる。鋭い痛みが指先に走り、意識が唐突に覚醒した私はお皿を取り落とした。
お皿が騒がしい音をたてるので荼毘さんが驚いたように顔を上げる。
「……どうした、指切ったか？」
荼毘さんは顔を上げ、こてんと首を傾けた。それを見て私は言葉を失う。お皿を割ってしまったことはもちろんだが、荼毘さんの言葉や表情が思ったよりも柔らかいことにも動揺してしまったのだ。初めて対面したとき、荼毘さんはこんなにも柔らかな目をした人だっただろうか。
荼毘さんは迷うことなく私の手を取ると、血がにじむ指先をまじまじと見た。そして水道をひねり、汚れた食器のたまるシンクに水が跳ねるのも躊躇わず、私の指を水に晒した。流れる水が私の指を撫でていく。指先が冷えていくのに比例して、私の手首を握る荼毘さんの手が、妙に暖かく感じた。
「すみません、荼毘さん」
居心地が悪くて謝ると、荼毘さんは不思議そうに私を見た。
「いや、普通いきなりこんなとこに連行されたら怒るだろ」
私は荼毘さんを微妙な表情で見上げた。自覚あったのか。
「自覚、あったんですね」
おっと、声に出てしまった。
目を見開く荼毘さんに私は肩をすくめる。と、荼毘さんは肩を震わせ、俯いた。やばい、怒らせてしまった、と焦る私に届けられた声は、想像とは正反対のものだった。
「……っ、はは！ 言うじゃねぇか、ポンコツ！」
心底おかしそうに笑う荼毘さん、私はポカンとして彼を見つめた。冷たく鋭い刃物のような目が細められ、柔らかく笑っている。
「そんなに笑わないで下さいよ……」
脱力してそう吐き出したら、なんだか私もおかしくなってきてしまって、つられて笑ってしまった。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
