第二十四話 ページ25
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すっかり夏が来て、朝方でも暑い日が増えた。私は洗濯物をたたみながら、からりと乾いた黒い服を撫でる。夏は良い。洗濯物も良く乾くし、食べ物は美味しいし。
今日は休日で、二人にお昼ごはんを作る予定なのだけど、そうめんとかいいかもしれない。
と、足音に顔を上げると、寝起きらしきトムラさんがいた。昨夜夜ふかしでもしたのだろうか、今日はいつもよりずっと寝坊気味だ。
「おはようございます、トムラさん」
寝癖がついているトムラさんにふふふと笑うと、トムラさんは寝起き特有の不機嫌な顔で近寄り、私の横まで来ると、その場ですとんと座り込んだ。そして正座する私の太ももに頭を乗せると、いわゆる膝枕の状態で満足そうに目を閉じた。
「と、トムラさん……？」
「五分」
「へ？」
「五分だけ寝る」
そう言い張ってすぐにトムラさんはすうすうと寝息をたてはじめた。突飛な行動にしばらく動揺するも、トムラさんを起こさないよう洗濯物を畳もうとするくらいには私の肝も座ってきたようだ。
この部屋は唯一、太陽の光が差し込む部屋だ。薄暗いバーと違い、洗濯物が乾くくらい日が差し込む。硝子の屈折を利用して少ない日光でも十分に明るくなるよう工夫してあるらしい。
開け放った窓からは夏の午前中独特の少しだけ爽やかな風が吹き込む。蒸し暑い夏だけれど、朝から昼にかけての風は清々しい。風は私の頬や、トムラさんの髪を撫でる。
私は目を閉じてみた。太ももの重みが、膝のあたりにかかる息が、吹き込む風が、すうすうというトムラさんの寝息が。トムラさんの柔らかい髪の毛に手を這わす。伏せられた睫毛、その穏やかな顔はまるで小さな子どもみたいだ。
いま、この瞬間だけは、トムラさんのこの穏やかな顔を私だけが独占している。それがなんとも言えない、切ない胸のしびれになって私を震えさせる。
「……おや」
様子を見に来たらしい黒霧さんは眠りこけるトムラさんを見て、悪戯っ子のように目を細めた。私は秘密を共有する友達のように笑いかける。
変わりましたね、囁くようにそう言い残して黒霧さんは去っていった。
変わった。それは果たして、善いことなのか。きっと誰かにとっては善いことでも、誰かにとっては悪いこと。世の中、そんなものばかりなのだろう。
「……トムラさーん、五分どころか十分くらい過ぎましたよ」
トムラさんはうっすらと目を開く。
じわり、その瞳に私を映すその瞬間を、私は心待ちにしてしまう。
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ちゃこ(プロフ) - うぅ…好きです！！今なら私も花咲かせられそうです😭！前から気になっていた弔くん…無事推しになりましたありがとうございます！！ (2022年5月25日 5時) (
レス) @page50 id: e4e61dc8c5 (このIDを非表示/違反報告)
mikitty(プロフ) - 完結おめでとうございます！最高でした！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: 05ebd46207 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - はなかっぱ… (2020年2月4日 3時) (レス) id: 86c077b51d (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - すごく良かったです！！！死柄木君の小説は初めてだったんですけど、もう最高すぎました！！ (2019年11月5日 22時) (レス) id: a8dea294c9 (このIDを非表示/違反報告)
オーバー - 完結おめでとうございます！最後までキュンキュンさせていただきました！！ 占ツクを徘徊していた時に、とんでもなく良いこの作品を見つけてからは、ずっと応援していました(´ω`*) もちろんこれからも応援しています、頑張ってください！！ (2019年8月25日 22時) (レス) id: 50e4bb27d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きりんの木
| 作成日時：2019年6月13日 19時
