-貴方と出逢えた日々が…-【練紅炎】

しまうんです ページ13

きぃ…という特有の音がする扉をゆっくりと閉めてその部屋から出た。自室へと足を向ける。







　歩きながら俺は、先程の話の内容を思い出していた。





　Aが本当は、あの夫婦の子供ではないと言う事。捨て子だったという事。Aの従者二人があれほどまでに過保護な理由。金目の意味。本当の親は、分からぬという事。全て…







　それらの内容を全て思い出して……


己の心の奥に一際大きな炎が燃えるような『怒り』を感じた。





　その怒りの矛先は、俺自身。俺は…









＿Aについてここまで無知だったのか＿＿









　苛々と積もっていくこの感情にどうしていいか分からず下唇を噛んだ。じわりと口内に鉄の味が広がる。








　自分の不甲斐なさに怒りしか感じない。


「ちっ…」


　俺は、何も知らなかった。何も…
　ずかずかと廊下を渡り自室へと仕事をするために入る。








　椅子に座り机の上に置いてある書類の一枚目に全て目を通して…やめた。




今の俺が書類を片付けたとしても冷静な判断が下せるとは、思えない。





　こういう時には、だいたいトランの本を読んで没頭しているのが良いのかもしれないが、今はそれさえも読む気がおきなかった。


「……」


　無言で立ち上がり、入ったばかりの部屋を後にする。


　今は、ただ無性にAに会いたかった。

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