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漆拾陸ノ破壊【奉呈品】 ページ28

_No side_

フョードル「処で、何があったんですか?」


笑顔の儘フョードルが聞く。


A『……実は__』


Aは少し黙った後、口を開いて話し始めた。少し長くなったのだが、フョードルは真剣に、時々相槌をうちながらその話を聞いた。


フョードル「成程…ですが、お兄さんにその七篠さんと云う方の心理が分かりますかね?

実際に七篠さんがそう仰ったならそうかもしれませんが、それを証明するものはもう何も無いでしょう?

あるとすれば貴方に託した手紙。その手紙を貴方に託さなければ、仕事仲間が回収するでしょう?故に七篠さんは、貴方に生きて欲しかったのでは無いですか?

数ヶ月前に貴方が話した異能力の事もそうですが、貴方を嫌っていたのなら、何故異能を自由に行使できるようにする必要があったのでしょう?」


Aはその時ハッとした。確かにその通りだと。

何時ものAなら直ぐに考えられることだが、恩人…而も自分に名を付けてくれた人が亡くなった後だと、頭が真っ白になるのは当然だろう。慣れていないからだ。

Aはスッキリしたような顔になり、フョードルに「そうですね」と笑いながら云った。


フョードル「戻りましたね」ニコッ


その後は数ヶ月前と同じように、時間を、人を、場所を忘れた話した。

途中、フョードルが渡した箱が気になり開けると、そこには光沢のある綺麗な硝子(ビヰ)玉が。

だが、瓶に入る硝子(ビヰ)玉とは違い、蒼く、綺麗に輝いた直径四糎程の物だ。


A「…綺麗」


フョードル「そんなもので済みません。もう少し価値あるものの方が良かったですか?」


目を輝かせて硝子(ビヰ)玉を見るAに、若干俯きながらフョードルは聞いた。


A「__いいえ。下さっただけで有難い事ですし、価値は貰った側が決めるもの。故に私が価値を決めるのです。これは私の宝物です。有難う御座います、フョードルさん」ニコッ


その回答は、フョードルの予想より少し上だったようだ。


フョードル「……ふふっ、貴方は不思議な人ですね。僕もそう云ってくれて嬉しいですよ、上げた甲斐が有ります」ニコッ


二人は机上に置かれた茶杯(テヰカップ)を持ち、上品に啜りあげた。

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作品ジャンル:アニメ
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作者名:匿名F | 作成日時:2022年3月6日 20時

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