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彼が何かを言い返すよりも前に通話を切る
純白のレースを強く握り締めて泣くなと自分に言い聞かせた
…よかったのか?と問う声と同時に頭を優しく撫でる
彼は…私を止めない
自分達の為にやっていることだ、と理解をしているから
それが自分の意に反することだとしても、止めることは出来ないのだ

「……さぁ、そろそろ時間よ。…最後まで、笑顔で見送ってくれる?」
「…………嗚呼」

ゆっくりと椅子を立ち、新郎の元へと向かう
ルックスも、頭脳もよし、完璧と言えるだろう新郎は私に微笑んで、腕を出す
私はそっとその腕へと手を回し前を向いた
ゆっくりと、大きな戸が開いて、真っ直ぐ伸びる道を一歩、一歩、進む
……彼と歩くことを望んだ道を、私は…他の人と歩んでいる
何よりもそれが罪悪感で…

「……新郎、新婦による誓いを、お願いします」

ベール越しに、居ないはずの彼の姿を探してしまう
こんな姿を、彼に見られたところで何も嬉しくは感じないけれど、嘘でもいいから、嫌い、と言われたかった

「私は、彼を夫とし、助け合い、一生涯の伴侶として愛することを…」
「嘘ですよ」

ふわり、と風が頬を撫でた
嗅ぎ慣れた畳の香り
私を包んだ温かさが…優しくて、心地いい
迎えに来ましたよ、と囁いた声が簡単に糸を解いた

「だ、誰だお前は!」
「嗚呼、小生は彼女と赤い運命の糸で結ばれた仲でしてねぇ?貴方に差し上げられる程、軽いものではないのですよ」

口元を隠し、優雅に笑う彼はしっかりと私を抱き締めて離さない
瞳から溢れ出す水滴が、彼の服を濡らしてしまう
彼が来てくれたのはとても嬉しい、けれど現状は厳しいものだ
現に、警備員達が私達を囲い、完全に包囲されている
……それなのに、彼はどうして…"笑って"いるの?

「Hey! Hey!てめぇら道開けな!お似合いお二人、邪魔する阿呆はあの世行き!」
「ッ…一郎!?」

ラップが響いた
此方へ向けて笑う彼は、彼らは、確かに言った

幸せになって、と

「さぁ、行きますよ。離さないでくださいね」
「は、はい!」

彼の手を強く握り締めて、弟達への感謝を胸に私は走った
いつの間にか、私達は渋谷迄、走っていた
息も切れて、化粧も、髪も崩れて、それでもどこか心地よくて不思議だ

「先程の誓いは、本当、ですか?」

真っ直ぐに私を見て彼が問う
握ったままの手が微かに震える
私の言葉は既に決まっていた

「嘘、ですよ!」

嘘つきな彼と、嘘つきな私の、本当の笑顔がやっと重なった気がした

同じ月を二人で見よう/夢野幻太郎(リクエスト)→←偽り愛/夢野幻太郎(リクエスト)



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いちごシロップ - リク消化ありがとうございました!幻太郎祭り笑笑夢野先生のお話がたくさん見ることができて嬉しかったです!これからも応援してます! (2019年4月21日 14時) (レス) id: 99dc49cbe7 (このIDを非表示/違反報告)
言の葉結ひ(プロフ) - 月華姫さん» 誤字報告ありがとうございます!分かりました!書かせて頂きます! (2019年4月20日 0時) (レス) id: 51c1ad90f1 (このIDを非表示/違反報告)
月華姫(プロフ) - →一郎夢【違法マイクの影響で夢主が精神だけ幼女になり一郎に甘えたり、一緒にお風呂入ろう♪と爆弾発言したり】以上の2つ両方ダメでしたら何方か1つお願いしますm(__)mではまたっ♪ (2019年4月19日 20時) (レス) id: 8c63610ac2 (このIDを非表示/違反報告)
月華姫(プロフ) - →三郎夢【違法マイクの影響で三郎が黒い毛並みのまん丸おめめの可愛い子猫(手の平サイズ?)になって夢主にメッチャ甘えたら?】 (2019年4月19日 20時) (レス) id: 8c63610ac2 (このIDを非表示/違反報告)
月華姫(プロフ) - リク夢3つありがとうございましたm(__)mどれもドキドキ胸キュンしました(//∇//)『純粋』理鶯夢にて『丁度、人形【を】同士で』で【を】余文字なのを報告します。此れからも応援しています!!また新たにリク宜しいでしょうか? (2019年4月19日 20時) (レス) id: 8c63610ac2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:言の葉結ひ | 作成日時:2019年4月9日 9時

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