三話 ページ5
――力のない俺が戦っても無意味なのはわかっていた。禰豆子の姿勢を無駄にしない為にも俺が取った行動は――
「はぁっ……はぁっ……すまない! 禰豆子」
隙をついて、裏口から家族が向かったであろう方向に行く……
走っていく内に段々と耳が真っ赤になっていく。吹雪く雪が痛い。
しかし少し走り抜けた先僕がそこで見たのは……
「母さん! 花子っ六太っ」
血だらけの、逃げたはずの家族だった。
「でも家の様に鬼はいない……なんで、どうして」
「少ししたら女の隊士が来る。それまで止血だ」
少し先には音が剣を軽やかに仕舞っている。
生きてる……のか? よかった。あの人がきっと助けてくれたんだ。
そうだ!禰豆子のことを!
「……」
家族に向いていた目線を先程の所に向けたがその場所にはもう居なかった。
神様、願わくば禰豆子の妹の命をお助け下さい。
まだ吹雪いてはいるがこの近くには食料庫の代わりにしている洞窟もある。全員の止血がひとまず終わったらそこに一時避難、をして置こうか。
――きっと炭治郎だったらこんな事をせずに諦めずに真っ向から向かっていたんだろう。これだから俺は無惨にも兄として認められなかったんだ。
ただ親の言うことを大人しく聞いて淡々と業務をこなして来た前世がある僕は……
「これで良し」
――洞窟に待機をして、みんなの心音を聞くことでようやく安心ができた。
洞窟の中にあった廃材を見つけて、今世の父さんに教わった通りに適当に火をつける。これで何も無いよりかは良いだろう。
「……無惨、ごめんなぁ」
本当に。邂逅……再会を果たすには遅すぎたのだ。わがままだけれど、本音から言えば覚えていて欲しかった、話をしたかった。
「いつかきっとお前を楽にしてやるからな」
あの時のような過ちは繰り返さない、繰り返してなるものか。
そうして三角座りをしている膝に自分の顔をうずくめる。
「よく頑張りましたね……さぁ皆さん緊急手当は済んでいるようですし早く屋敷に連れていきましょう」
――なんの音もなかった。さわりと髪の毛を掬われた音でその存在に気がついた。
それは美しい紫色の髪をした女の隊士と黒服をまとった人達だった。
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作者名:フクラム | 作成日時:2019年11月10日 12時