こっち向いて、月島くん。【短編集】

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ついにやってきた、2月14日。





＿＿＿＿ と言いたいところだが、





なんと今年はバレンタインが平日。




バレンタインに一番近い日曜日に約束をした。





小さい時からの付き合いのため、



毎年 バレンタインの時は、どちらかの家に遊びに行くことが多い。




今年も、


「人混みにわざわざ入っていくの？


意味わかんないんだけど」



という蛍の意見で、集合は蛍の家。









チャイムを押すと、いつも通りテンション低めな蛍が



寒そうにドアを開けた。






「寒いから早く入って」




「う、うん」





いつもなら、ふざける余裕があるものの、



今年は違う。





この関係をかけた、大事な日。









「あれ、蛍、そっちって階段じゃ…」




「今 リビング片付いてないから、



僕の部屋 来なよ」









しかも 蛍の部屋…？！






「初めてだね、蛍の部屋入るの」





平静を装って、話しかける。





蛍は「そうだね」といつもと同じトーン。





緊張してるのが私だけみたいで、ちょっと悔しい。









適当に座ってて、と通された蛍の部屋には




バレー関連のものもいくつか置いてあり




態度に出さないだけなんだなぁ、なんて




改めて思ったり。









「人の部屋 ジロジロ見るとか、趣味 悪。」




「ジロジロなんて見てないし。


あっ、ココアだ！」







蛍はいつも、私にはココアを出してくれる。




冬に飲むあったかいココアほど、幸せなものってない……。








「ん！あま〜♡


やっぱり蛍の作ってくれるココアが一番おいしい！」







甘いものは、いつでも私を救ってくれる。








「あ、そういえば、バレー部どう？楽しい？」





「別に。普通」





「一年生 凄いんでしょ？


日向くん、だっけ？あ、あと 影山くんか！


あの二人のコンビプレー、見てみたいなぁ。


あっ、そうだ。忠も頑張ってるんで ＿＿＿ 」









ここまで言いかけた時、近くに座っていた蛍が




私の腕をぐい、と引っ張った。







「…Aは今、誰といるの」





「へっ？！」




ぐっと距離を詰められ、思わず心臓がうるさくなる。




「僕といるのに、僕以外の奴の話なんか、


しなくていいでしょ」









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