*資料 ページ39
結局どうしておっさんがあんなこと言ったのか……どんなに問いただしても答えてはくれなかった。
『これはお前にしかできないことだ。その資料を読み、雪柳の全てを知った上で、今後、彼女とどう接していくか考えろ』
それだけ言って、半ば一方的に話が終わってしまった。
とりあえず大事な資料には変わりないから、一度部屋に資料を置いてから、レッスンルームに戻った。
戻っても案の定、まともに練習どころじゃなかったけど……
部屋に戻った後で、恐る恐る資料を読んでみた。
そこに書いてあったのは、おっさんが言ってた通り、Aの出生についてと、施設に来る前の家庭環境について、詳しく書かれていた。
そして……
音也「なんだよ……これ……」
あまりにも悲惨なその末路……
そして……その後に取った、Aの行動……
当時の幼いAには、あまりに重すぎる過去……
吐き気さえ込み上げてきて、とてもじゃないけど最後まで読むことはできなかった。
トキヤ「音也?大丈夫ですか?」
音也「あ……う、うん……平気……」
様子を見かねたのか、トキヤが声をかけてきた。
トキヤ「顔色が悪いですよ?……それ、社長からもらった資料だと聞きましたが……」
音也「な、なんでもないよ!!本当に平気だから……!!最近ちょっといろいろあったから、疲れてるのかな……」
誤魔化すように、俺は慌ててそう言った。
そんな俺の様子にトキヤも何かを察したのか、それ以上は何も聞かないでいてくれた。
おかげで少しだけ、冷静になれた気がする……
そうして、俺はもう一度資料に目を向ける。
資料はまだ続きがあるけど……今はとても、続きを読む気にはなれないな……
そう思いながら、俺は資料をそっと机の中にしまった。
そして少し落ち着いたところで、改めて思い知らされた。
俺……Aのこと、何も知らなかったんだなって……
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十九 雷音(プロフ) - 南さん» コメントありがとうございます! そう言っていただけて本当に嬉しいです!今後とも頑張らせていただきます! (2019年2月27日 8時) (レス) id: 4c772ef18e (このIDを非表示/違反報告)
南 - 音也の夢小説は今まで読んできた中でも一番に面白いなぁと思いました! これからも頑張って下さい! (2019年2月26日 23時) (レス) id: d0756aba1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十九 雷音 | 作成日時:2018年9月1日 18時