四十七、偶然 ページ3
身体がだるい。
原因は判っているけれど、なおさらそれを思い出すと体が重くなる。
ため息をつきつつやっと出勤すると、崎見さんが「おはようございます」と声をかけてきた。
「体調は大丈夫ですか」
「はい、すみません。ご迷惑をおかけしました」
苦笑いしつつ席に座る。……気を抜くと、今朝の衝撃がよみがえって涙が滲んでしまいそうで、わたしは表情を引き締める。
何を知られたくないっていうの。知れば何が変わるの。……誰が真実を知っている?
異能犯罪者。【匣】。そして心中未遂事件。
あの時の捜査資料がどこにもなく、処分されたのは、特務課とポートマフィアの結託によるものだ。
だとしたら知っているのは誰だろう。異能特務課の中で、司法修習を一緒にした人間はいなかっただろうか。
坂口さんに聞くことは出来ないだろう、きっと既に治の手が回っている。
……いや、それならもう既に異能特務課に検察に協力する者はいないと考えた方が自然だろう。
「迷宮入り……になっちゃうのかな……」
そんなこと、させたくないけど。でも、わたしの相手は治だ。一筋縄ではいかない。
……勾留期間はとうに過ぎているので、異能特務課からの使者……つまり加害者役のエージェントは既に不起訴になっている。
彼から情報を聞き出すことは不可能だ。
……【匣】や、その研究内容が漏れて欲しくないのは恐らく治だけでなく特務課もなんだろう。
「一寸珈琲でもいれてきますね」
「ああ検事、雑事なら私が」
「いや、大丈夫です。なんか少し気分転換したい気分なんです」
腰を浮かす崎見さんを笑って制し、わたしは給湯室へと足を向ける。
カフェインがぼうっとした頭をスッキリさせてくれるといいんだけど、なんてことを考えながらため息をついたその時だった。
ドンッ、と軽く肩に衝撃ののち、足下にばらまかされる書類。
ぎょっとして顔を上げると、そこには先輩検事がいて。
「す、すみません! 前見てませんでした! 拾うの手伝いますね」
「あ、ああ、大丈夫だよ。助かる」
あわてて散らばった書類を掻き集める。ぼうっとしてて先輩検事に衝突するとかどんな新人だ。
ついてない、と思いながら最後の1枚に手を伸ばす。そこでふと目に入った写真は、殺人事件の凶器らしい……銀色の拳銃だった。
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さにー☆彡(プロフ) - りささん» 互いの『最優先』を尊重する、あるいはこの2作の内容全てといったところでしょうか…(文法に違和感を覚えるのはそういうものとして御海容下さいませ…) (2021年5月18日 11時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 最後のところの『それ』って何なんでしょうか? (2020年5月18日 16時) (レス) id: 486a37f744 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!!設定や中身まで楽しんで頂けたようで何よりです!! (2019年7月31日 18時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 設定、話の内容、文才、全てが素晴らしくて、読んでいてとても楽しかったです。作品様すばらしいです…!!ありがとうございました。 (2019年7月31日 17時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆずみかんさん» ありがとうございます……!!主人公がやばくてすみません……!こいつ大丈夫かと何度も思われたことでしょう申し訳ない← こちらこそこの作品を最後まで読んでくださりありがとうございました!!コメントすごく嬉しかったです…! (2019年6月6日 8時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sunny | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年9月7日 14時