四十六、何をされたとしても ページ2
____何をされたのか、何が起こったのか、判らなかった。
朝。ひとり起きて、不自然に皺の寄ったシーツの上で、呆然と窓の外を見遣る。隣には誰もおらず、家の中もがらんとしていた。
時刻は八時前だが、今から出勤をしようと思っても間に合わないだろう。支部長に遅刻の連絡を入れなければならない。
「____っどうして」
酷いことをされた、最低だ、……そう思っても、どこか嬉しく感じてしまう自分がいることが何よりも悔しく思える。
夜に感じた肌の熱が身体から離れていかない。初めてしたような
……妹として見ているとか、女として見ているとか、そういう問題じゃないんだ。治の隣に立ちたい、ただそれだけなのに。
彼はわたしを求めたんじゃない。求められて奪われたのなら、まだ良かった。自分から受け入れたってよかったくらいだ。
でも違う。彼はわたしを止めるために、自分の意志を固持するために、昨夜、わたしを。
「……わたしの下着姿見ても何も思わないとか、何があろうと常時カンペキな理性が発動しているとか云ってたくせに、如何して今になって」
莫迦みたいだ、本当に。治じゃなくて、もちろんわたしが。
わたしの意志をくじかせるために、治は徹底的に手を打つだろう。
異能連続殺人犯、そして【匣】。この繋がりを調べるためのわたしのパイプを尽く消していく筈。
そうすることが手に取るようにわかる。物心ついた時から一緒に居たんだ。……そしてわたしにはそれを止める術がない。
彼が接触するとしたら、特務課の誰かだろうか。武装探偵社を彼奴に紹介したという種田山頭火長官か、坂口さんか。……あるなら前者か。
治は【匣】の副班長の正体などにも見当をつけているんだろう。そして矢張り、そこには今回の異能連続殺人との繋がりを見出している。
「治、……治」
君と並ぶためならば。わたしはどんなことだってするよ。
そうやって決めてたんだ。ずっと昔から。引き下がったりしない。何があったとしても。何をされたとしても。
「____そうだ、」
ふと思い出した。そういえば……、
わたしって、昔から記憶力が良かったんだっけ?
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さにー☆彡(プロフ) - りささん» 互いの『最優先』を尊重する、あるいはこの2作の内容全てといったところでしょうか…(文法に違和感を覚えるのはそういうものとして御海容下さいませ…) (2021年5月18日 11時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - 最後のところの『それ』って何なんでしょうか? (2020年5月18日 16時) (レス) id: 486a37f744 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!!設定や中身まで楽しんで頂けたようで何よりです!! (2019年7月31日 18時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 設定、話の内容、文才、全てが素晴らしくて、読んでいてとても楽しかったです。作品様すばらしいです…!!ありがとうございました。 (2019年7月31日 17時) (レス) id: e69c1b6ddb (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - ゆずみかんさん» ありがとうございます……!!主人公がやばくてすみません……!こいつ大丈夫かと何度も思われたことでしょう申し訳ない← こちらこそこの作品を最後まで読んでくださりありがとうございました!!コメントすごく嬉しかったです…! (2019年6月6日 8時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sunny | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年9月7日 14時