【黒子のバスケ】先輩、振り向いて下さい【黄瀬涼太】

45話 ページ46

＿＿＿＿春は、嫌いだ。


散る花を見ると、何故か…胸が痛くなるから。



「あー、腰いてー…帝光のパイプ椅子、かてーんだよ」


「パイプ椅子はどれだって変わらず硬いですよ…青峰君、式の途中がっつり寝てましたよね」


「あー、それ俺も見たかもー」



3月下旬なのに、桜が咲いている。もう散っている花もある。


ずいぶんせっかちな桜だ。



卒業式を終えて、泣いている卒業生がたむろしている中、オレ達は歩く。


送辞をした赤司っちと、伴奏の緑間っちは少ししてから来るらしい。


お世話になった先輩への挨拶をするために、バスケ部の軌跡がある第一体育館に。



「全く…黄瀬君ですら寝てなかったのに」


「ひどい！どういう意味ッスか、それ！」


「まったく青峰君は仕方の無い人だ、という意味ですよ」


「おいテツ！」


「違うッスよね！絶対オレもひとまとめにしてけなしてるッスよね！？」



来年は、オレ達がバスケ部のトップに立つ。


失ったメンバーもいるけど、全てを背負っていかなくちゃならない。


帝光中のため。



「あ、」



不意に、耳もとで何かを囁かれたような気がして、振り向く。


そこには誰もいなかったけど、オレは足を止めた。



「黒子っち。赤司っち来たら、少し遅れるって言っといてほしいッス」


「黄瀬君？」


「すぐ戻るッスから」



待ってる。待ってるんだ、きっと。


そこはきっとここの近くで、彼女はそこにいる。



彼女とオレが初めて会った場所。


体育館へ続く、人気のない外廊下＿＿＿＿…。

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