弐拾伍 ページ26
次に目が覚めた時には、見慣れた天井だった。
ここ、蝶屋敷の治療部屋。
ゆっくりと身体を起こすと、左手に違和感を感じた。
誰かに手を握られている。
少しの期待を抱いて僕の手を握る相手を見た。
でも、そこに居たのは僕の求めていた人ではなかった。
熾勇「……………… 起きて、禰豆子。」
僕の問い掛けに、禰豆子はすぐに目を覚ました。
そして、僕の傷を労りながら、優しく抱き締めてくれた。
その瞬間、僕の瞳から溢れ出る涙。
熾勇「………… っ、うっ、…… ひっ、……
違っ、…… ごめんっ、………… 禰豆子が、謝ることじゃっ、…… 」
禰豆子は僕を抱き締めながら、謝ってきた。
義勇じゃなくてごめんね。私でごめんね。…… と。
その優しさが、今の僕には酷く心に刺さるものだった。
実際に、兄様じゃない人で凄く、心の底から失望した。
嗚呼、やっぱり兄様は僕の事を愛してくれていないんだって。
僕のことなんかどうでもいいんだって。
だけど、それを理解した上で僕を慰めてくれた禰豆子の優しさが、今の僕の心の穴を埋めてくれている。
熾勇「…… ぁにさま、やっぱり、…… 僕の事、どうでもいいんだ。
結局、………… 兄様が愛してるのは、…… 【あの人】なんだ。」
だから、僕が死んだら、【あの人】が帰ってきてくれるって思ってるんだ。
だって、【同じ体に魂は二つも要らないもの】
すると、禰豆子が僕の頭を優しく撫でてくれた。
そして、優しく微笑んだ。
禰豆子「………… うぅ、うー。」
……………… うん。ありがとう。
熾勇「ありがと、禰豆子は本当に優しいね。
お前は、………… 信じてもいいかもしれない。
…… ねえ、もう暫く、僕のそばに居て?」
その言葉に、禰豆子は優しく頷き、また手を握ってくれた。
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作者名:アルビリオン | 作成日時:2020年4月17日 10時