鳳の本心:★ ページ9
ちょっと高めの居酒屋の個室、少し酔いの回った私と、苦笑いをする鳳くん。彼とはよく呑みに行く仲だ。
「酷くない?」
「酷い男ですね、別れて正解ですよ」
しかし議題は私の愚痴会である。
困ったように相槌を打ってくれる、鳳くんの聞き上手さに甘えて男運の無い私はいつも何かある度にこうして彼をストレスの捌け口にしてしまう。鳳くんの前では本当に何でも喋ってしまって、彼はそれを全て受け止めてくれるのだ
「はぁ、どっかにいい男落ちてないかな」
「落ちてる時点でそれはいい男じゃありませんよ」
「確かに」
幾分かスッキリして、クスクスと談笑混じりに酒を煽る。飲み過ぎですよ、なんて笑いながらも止める姿勢を取ってくれる鳳くんはいつも潰れた私を介抱してくれた
空いたグラスを下げながら、鳳くんは机にもたれ掛かる私を覗き込む
「ちなみに、Aさんの良い男の定義って何ですか?」
「んー……」
その質問は中々に哲学的であり、酒に浸かった脳みそで頭の良い回答は出せない
「やさしくてー」
なのでとりあえず思いついたことだけを言う
「はは、舌足らずになってますよ」
そうすれば鳳くんは笑いながら私の背中をさすってくれた。私は続ける
「気が遣えてー」
「分かりましたから、1回お水飲みましょう?」
「私の話を聞いてくれてー」
「はいはい、それで?」
それからもずっとポンポンと理想を掲げていけばある所で頭が一気に覚醒した。とろんとなっていたであろう目が見開かれる。伏せていた身体をゆっくりと起こして隣を見ると鳳くんはまだ優しい笑顔で私を見つめていた
ああ、灯台もと暗しとはこういう事なのか
「なんだ、鳳くんって良い男だったんだね」
「……」
なんてね、と冗談っぽく笑うと鳳くんは先程までの綺麗な笑顔を辞めて机に頬杖をつき……
「やっと、気づいてくれました?」
今度は扇情的な笑みを向けてきた。
「……っええ、と」
その顔付きに胸が高鳴る。なんだこれ、鳳くんが鳳くんじゃないみたい。
誤魔化すようにお冷に手を伸ばすとその手は呆気なく捕えられ指まで絡められる。気づけば距離も縮まっていた。
「けど……ちょっとだけ、今だけは、悪い男になるかもしれませんね」
見た事もない表情で私に詰め寄る白い王子様に、今日が最後の愚痴会になることを静かに悟った
鳳の本心
好きな人の前では良いところを見せたいし、貴方の前ではそれ以外も見せたいんですよ
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くろかは(プロフ) - 「大事そうな話」が特に好きです!いや全部面白いんですけどね!!(*゚∀゚*) (2019年3月9日 11時) (レス) id: e34a9a5e9f (このIDを非表示/違反報告)
ろちこ(プロフ) - びょるさん» 繰り返し失礼致します、続編に載せる予定だった四天宝寺プロポーズネタを急遽こちらで載せることになりましたので、ご連絡失礼致します!リクエスト本当にありがとうございました! (2018年4月17日 6時) (レス) id: 7838910af6 (このIDを非表示/違反報告)
ろちこ(プロフ) - ふゆさんはじめまして!全てのお話に目を通して頂きありがとうございます!!お褒めの言葉まで!白石君程に融通の利くキャラはいません!書きやすさに重宝させて頂いてます笑。本当にありがとうございます、嬉しすぎます。これからも何卒、宜しくお願い致します! (2018年4月17日 2時) (レス) id: 7838910af6 (このIDを非表示/違反報告)
ろちこ(プロフ) - 信玄さん» 信玄さんはじめまして!コメントありがとうございます!私もめっちゃ嬉しいです!続編でも何卒宜しくお願い致します! (2018年4月17日 2時) (レス) id: 7838910af6 (このIDを非表示/違反報告)
ろちこ(プロフ) - 涼音さん» 涼音さんありがとうございます(><)続編でも何卒宜しくお願い致します!会員登録までっっ!本当にありがとうございます!仲良くしてくださいっ! (2018年4月17日 2時) (レス) id: 7838910af6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろちこ | 作成日時:2018年3月6日 12時