【d!】傾国の天使。 (ページ7)

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７△ 飛び出した虚言ページ7

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「私は、えっと⋯⋯その、しょッ⋯⋯、娼婦よ！！！」

　総統室にて、天使のように可憐な少女からとんでもない単語が飛び出す。彼女の名はアントネラ・シークラット、我国の敵国であるエデンズの第一皇子の元婚約者だった。そんな気高く、汚れも何も知らない美しい彼女は自身のことを「娼婦」だと言った。
　勿論、それに対しチーノは大きく口を開けた。麗しのご主人様が娼婦だなんて有り得ない話だ。

　然しチーノは彼女が自身の身分を隠したいのも何となく分かった。もし第一皇子の元婚約者がこんな所にいたらスパイとして疑われても仕方ない、下手したら大きな国際問題にだってなりかねないのだ。

　しかしいくらなんでもこの国で娼婦はないだろう、とチーノは阿呆すぎる愛しのご主人様を見つめた。
「我国(わこく)には女はいない、ましてや娼婦なんてのもいない」
　そしてそこで冷静に返すのが総統グルッペン・フューラーだった。そうこの国は彼等が作り上げた小さな国、迫害され続けた醜い男を集めた自分達だけの理想国家。そんな国に女、ましてや娼婦なんてものはいないのだ。

　今いる国が“我国”だなんて聞いてない、と言わんばかりに「⋯⋯そっ、へ！？アッ、の」と言葉を詰まらす。

　そしてアントネラは顔を真っ赤にしてあわあわと慌てた。それから徐々に縮こまるなり、小さな小さな声で「お恥ずかしい話ですが、私は身分も何もかも捨てて此処に連れてこられました。もし拾って下さるなら娼婦でも何でも致しますわ」とはっきりと言った。嘘をついても仕方ないと気付いたのだろう。

　チーノはまた眉を顰めた。

「⋯⋯お嬢様、それはいくらでも何でも」

「いいのチーノ、それにもう貴方のお嬢様じゃないでしょう？他国の令嬢が逃亡するってこういう事だし、覚悟はしてたから。それに私知ってたし。貴方が何処かの国のスパイだって、まさか我国だとは思わなかったけど」

　彼女だって伊達に第一皇子の婚約者をやっていた訳では無い。それ相応の知識、教養はあった。ただ前世の記憶が足を引っ張って阿呆さ加減が出てしまっているだけで、黙っていれば完璧なのだ。
　唖然とするチーノにアントネラは相も変わらず見惚れるような綺麗な笑みを浮かべた。

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