【d!】傾国の天使。 (ページ6)

今日:137 hit、昨日:148 hit、合計:1,711,207 hit

６△ 目移りするスイーツページ6

.

　奥の方に進んで、ある部屋の前に着くとチーノが「起きてください」と私を少し揺さぶる。

　それから私はさも今起きましたと優雅な感じで起きれば、少し安心したように微笑むチーノがそこにいた。
　うううう、好きよチーノ！結婚して！と抱き着きたい衝動を抑え、私はわざと不安げにキョロキョロと見渡して「此処はどこなの？チーノ」と呼んだ。

　それからチーノは質問に答えず、何処か名残惜しそうに私を床に下ろすと、申し訳なさそうな顔をして目の前の部屋のドアを叩いた。
　名残惜しいのはこっちよ、墓までしがみつきたいくらいなのに

　⋯⋯そして私の横にはチーノと話していたであろう“コネシマ”さんがいた。私よりも身長が遥かに高くて、少し見上げてしまう。

　あ、ちょっ、待ってちょっと待って！

　すっごい素敵！金髪碧眼なんてどこの王子様なの？健康的な肌色、何処か警戒している目もむしろ色っぽい。やだ、素敵。そのまま私に微笑んでくれたならその瞬間から私はコネシマさんの恋の奴隷になるわ！！

　なんてそんなこんなでどんちゃん騒ぎの私の心の中。

　コネシマさんはじっと見つめる私に驚いたのか少しを見開いて、すぐに気を取り直したように部屋へと入っていった。
　残念。微笑んでくれてもよかったのに、と肩を下ろす。

　もちろん私もその場にいるわけに行かず、二人の後ろをついていった。

　そっと部屋に入っていけばそこに居たのはまた大好物なイケメン。あらやだイケメン天国⋯⋯？
　ビリビリと感じる威圧、狼のようなギザギザな歯を覗かせて彼はニタリと悪どい笑みを浮かべている。綺麗なブロンド、一目惚れ不回避だわこんなの⋯⋯と私はよろめいた。

「それで、誰かね？その美しい女性は」

　声まで素敵とか天は二物を与えてしまうものなのね、と昇天する。
　貴方も彫刻のように美しいわ！と身を乗り出して言いたいぐらいだ。私の頬は林檎のように紅くなっているだろう、それぐらいイケメンに囲まれたこの空間に大興奮していた。私がゴリラだったら確実にこの場でドラミングをしていたわね。

　でも大興奮していた私の中で、少し聞き捨てならない言葉が聞こえる。私が誰なのか、と彼は聞いたのだろう。

「彼女は、」

　チーノはきっと素直に答えてしまう、だって彼はこの国のスパイなんだから。

「私は、えっと⋯⋯その、しょッ⋯⋯、娼婦よ！！！！」

　焦った私はとんでもない言葉を口走っていた。

.