【d!】傾国の天使。 (ページ4)

今日:16 hit、昨日:121 hit、合計:1,707,895 hit

４△ スパイは頭を抱えるページ4

.

「私、貴方がいい！！！」

　執事に選んだその時もチーノは驚いていたな、なんてあの時を思い出す。それからチーノは私によく尽くしてくれた。
　どうしてこんなに尽くしてくれるの？とチーノに聞けば返ってきた答えはこうだった。

『俺を見つけてくれたお嬢様の望むことはなんでもしてあげたいと思ってるんです』
　くぅうう、好き。これだからイケメンはずるい。何しても様になる。イケメン最高。
　少し執事としては荒っぽい口調、時々私を見つめる眼差しが熱っぽいのはきっと勘違いでもなんでもないんだろう。それでも手を出さない辺り執事の鏡なのだ。私のチーノ偉い、かわいい。

　何処に行こうか、と身を寄せあって話すのすら楽しい。息苦しい貴族生活とは大違いだ。正直イケメンと一緒にいるだけで楽しい！！本当に前まではただの令嬢と執事だったからこんなに密着することなんかなかったし、幸せだ。
　安心しきった私は荷物を運んだ揺れる馬車の中で愛しのチーノの胸で眠りに落ちる。チーノの甘くて優しい匂いに包まれて、私は夢の中へと旅立った。

「───⋯⋯ああ、ホンマにどうしよ。トントンさんに報告しな怒られるよなこれ⋯⋯」
　チーノはアントネラを腫れ物のように抱えながら、器用にこめかみを押さえる。

「⋯⋯スパイとしてエデンズ国に入ったのになんで本気になってるんやろ、」

　チーノは元々我国(わこく)から送り込まれたスパイだった。
　第一皇子の婚約者の家に一瞬でも潜り込めたら上々、と思っていたチーノ。まさか醜い自分がその第一皇子の婚約者に気に入られるとは思ってもいなかったのだろう。
　────異性とこんなに真っ直ぐ見つめあったのは初めてやった。しかもその相手は天使のように可憐な美少女、よく笑う綺麗な人。

　醜い俺が本来、触れていいもんじゃない存在。でも触れたくて仕方ない愛しい人。

　ただでさえ新人やのに、国に連れて帰ったら流石に怒られるよなあ⋯⋯。

.