【d!】傾国の天使。 (ページ25)

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２５△ エデンズ国の思惑ページ25

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　アントネラがエーミールを襲う所から場面は変わり、此処はアントネラが元いたエデンズ国のとある皇室。ガシャンッ、とコップの割れる大きな音がその部屋に響き渡った。

「クソッ、アントネラはまだ見つからないのか！！私の妾にしてやろうとしてやったのにあの女は⋯⋯！！」
　その声の正体はディティール・アルベルト、アントネラの元婚約者の男だった。その横では従者が「申し訳御座いませんっ申し訳御座いませんっ」と謝罪の言葉を繰り返している。
　その横ではメイドがぽーっと頬を赤らめ皇子を見つめていた。

「あの女の事だ！！あのお気に入りの醜い従者と共に駆け落ちしたんだろう！！必ず見つけ出せ、出なければお前は死刑だ！！」

　この世界では顔面の善し悪しが正義だ。例えどんなに醜いものが正しくあろうとしてもそれは悪だと言われてしまう、頭のおかしい常識がその世界にはあった。
「ああ、なんて腹立たしいんだ。こんなに美しい私をみてもあの女は見ようとしないッ、媚びを売ろうともしない。むしろまるで私を醜いものを見るような目で！クソッ！！！腹立たしい女め！！少し妹のシスティーナで嫉妬心でも煽ってやろうと思えば逃げただと！？私は絶対にお前を逃がしたりしない、捕まえて必ず私のモノにしてやる⋯⋯！！」
　富を表す大きな腹を揺らし、ブヒディティールはテーブルを蹴り飛ばした。
　その横ではアントネラの妹システィーナが俯きカタカタと肩を震わせ、屈辱⋯⋯そう言わんばかりに顔を歪ませている。

「おい、いつまでこの部屋にいるつもりだシスティーナ。アントネラより劣るお前に興味はない早く出ていけ」
「⋯⋯で、ですが私達は本日より夫婦で、」
「喧しい！！！この美しい私がそこら辺にいそうな顔のお前と夫婦だと！？笑わせるな！所詮は仮面だ！アントネラが帰ってくるまでのなッ、さっさと出ていけ！」
「⋯⋯は、い、失礼します」

　愛されていたのは自分だと驕っていたのに、ただ利用されただけにすぎなかった彼女はガリガリと爪を噛んだ。

「ぜったいに、許さない。許さないからアントネラ」

　─────その日、エデンズ国では第一皇子ブヒディティール・アルベルトと公爵家システィーナ・シークラットの華やかな結婚式が挙げられ、国民は歓喜した。

　そして人知れず、寄り添うその姿の裏では様々な思惑が交差していた。

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