【d!】傾国の天使。 (ページ23)

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２３△ 望むものはただ一つページ23

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「ヒグアアッ！！？？！」
「逃げないで」
　手を握られたエーミールが動物にも似たような声で鳴く、逃げようとするその手をアントネラは指を絡ませて捕まえた。

「ほら、何も怖くないでしょう？」
　相変わらず顔だけはいいアントネラはその顔を生かすようにゆったりと微笑んだ。そしてエーミールの絡ませた手をゆっくりと緩ませて、揉むようににぎにぎとさせる。

　涙目のエーミールはその握られた手とアントネラの顔を交互に見ている。その顔は何かに怯える小動物のようだった。
　そして5分、10分と手を握られていくうちにエーミールはどことなく慣れてきたのかもじもじしながら、アントネラの顔を色を伺うような素振りをして口を開いた。相も変わらずその顔は真っ赤で可愛らしいな、とアントネラは蕩けたような笑みを浮かべた。

「⋯⋯その、⋯⋯失礼な質問ですがアントネラさんは目があまり見えてらっしゃらないのですか？」
「目？何も悪くないですよ？ちゃんとくっきりはっきりとエーミールさんの素敵な御顔は見えてます」
「⋯⋯それは多分、目の病気かと」
「いや違いますわ」
　やたらとアントネラの目の病気を疑うエーミール。仕方ない、彼はこの世界では醜い存在なのだ。
　一般の女性ならエーミールやこの国にいる男達を見た途端、顔を嫌悪に歪め、触れようものなら蕁麻疹に苛まれ失神していただろう。

　なのになんだこの天使のように可憐に微笑む女性は、とエーミールは震えていた。
　盲目なことを疑えば違うと否定した挙句、素敵な御顔が見えてますよとまで言い放つ。おかしい、こわい、とエーミールは得体の知れない彼女に余計に恐怖心を募らせた。

「な、何が目的⋯⋯ですか？」
「へ？」
「この国の総統ですか？それとも財力？土地？貴方は何が目的なんです⋯⋯？」

　エーミールのその言葉でアントネラはやっと自分が疑われているのだと知った。何が目的なのだと聞かれても、と悩むアントネラ。

　そして暫く間を置いた後、じっくりとじんわりと

「⋯⋯男、でしょうか？」

　と馬鹿正直に言い放った。

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