【d!】傾国の天使。 (ページ3)

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３△ 揺れる箱の中の二人ページ3

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　ガタガタと揺れる馬車の中で私はチーノの胸に顔を寄せる、ドギマギとぎこちないチーノは大変愛らしい。

　私がただの令嬢だった頃はチーノがいくらこの世界の不細工だろうが男と女、そんなことしたら不貞を疑われかねないし、淑女としての秩序が保てない。だからこんなこと出来なかったし、チーノも急に箍が外れたように甘える私に戸惑っているようだった。
　綺麗な顔を隠すような大きな分厚い眼鏡、少し弱々しく見えるけど筋肉のしっかりついた細い身体、桜色の吸い寄せられるような形のいい唇、眼鏡の底からは切れ長のサンストーンのような瞳が覗いている。ふわふわの空色の髪の毛も全部全部素敵だ。

　それを以前、メイドのアルマに言ってみれば「お嬢様⋯⋯、正気ですか？あの毒蜘蛛みたいな男が良いのですか？？？」と真剣な顔で言われた。いや毒蜘蛛て⋯⋯。

　今世でいう不細工は忌み嫌われる存在だ。筋肉のついた男は蛮族で、細い男は富を持たない無価値な男。造形の整った顔は毒蜘蛛の様に醜くて、逆に形の悪い目や鼻がこの世界では美しいとされている。

　正直私はついていけなかった。

　あの殿方本当に素敵だわ、と聞いて見てみればイボガエルみたいな男がそこにいて。あの殿方はなんて勇ましいのでしょうと見てみればまるまる太った馬みたいな男がそこにいた。

　周りとの認識が違いすぎてノイローゼになるかと思ったわ。

　そして私は不細工(イケメン)に飢えに飢えた。だから執事を雇いたいという形で、募集をかけた。もしかしたら私の中のイケメンに会えるかもしれない、と期待を込めて。

　そこに現れたのがチーノだったのだ。

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