【d!】傾国の天使。 (ページ17)

今日:69 hit、昨日:148 hit、合計:1,711,139 hit

１７△ 瓶底眼鏡の下ページ17

.

「ホンマにええんか、お前」

　アントネラのその言葉にコネシマはこくりと喉を鳴らした、まるで魔法で魅了されているようで
アントネラの惹き付けられる何かに、コネシマはゆらりゆらりと蝶が花に吸い寄せられる、まさにそんな風に骨ばったその手を頬に寄せていく。アントネラの今着ている服は鎖骨を強調させるもので、何年かぶりの女の白い柔肌にコネシマはまた唾を飲んだ。

「えっ、ろ⋯⋯」

　そしてコネシマとアントネラの唇と唇が合わさろうとした。

　まさにその瞬間だった。

　───バッターーンと大きな音を立て、丈夫な筈の扉が吹き飛ばされる。コネシマは思わず「はッ！？！おま、チーノ！何してくれてんねん！」と大きな声を上げた。

　そして開け放たれたその向こうでゼエハアゼエハアと肩で息をするチーノ、余程アントネラを探していたのだろう。有り得ないほど顔色が悪い。

「あらチーノ」
　アントネラは冷静に微笑んだ。

「あらチーノ、じゃないですよお嬢様ッ！！あれほど言うたやろ、外には出るなって！」
「部屋の中で缶詰にされたら私病気で死んじゃうわ」
「死なへん！！アンタはいつ殺されてもおかしくない人間なのにもう！！ほらはよ帰りますよ！」
「やーん、乱暴しないで」
「ホンマにもお〜〜」

　コネシマはその光景をみて、何故かじくりじくりと何かが胸に侵食していく感覚に陥っていた。それが何かコネシマにはまだよく分かっていない。のらりくらりと部屋を去ろうとするアントネラにコネシマは思わず「なあ、」と呼び止めた。

「アントネラ⋯⋯やったよな」
「あらなあにコネシマさん」

　くりくりとしたその愛らしい瞳は真っ直ぐとコネシマを見つめている。

「また、会いに行ってもええか？」

　コネシマは自分の吐き出したその言葉は自分自身あまりにもらしくないと、恥ずかしかった。顔が熱い、少し顔がいいだけの女一人に何をここまで恥ずかしがってるのだろうとコネシマはじわじわと込み上げる羞恥心を誤魔化すように下唇を噛む。それを見ていたチーノは瓶底眼鏡の下で大きく目を見開いている。

　肝心のアントネラとはいうと、聖母のような表情でこくりと頷くと
「もちろん、その代わりチーノの壊した扉は見逃して頂戴ね！」
　とパチリと一つ綺麗なウィンクをした。

.