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『 ・・・さむ 』
両手を擦り合わせて、息を吹きかける。
ならず者の街、なんて呼ばれているここ、かぶき町。
確かに、今みたいな昼下がりは普通の賑やかな街だけれど、夜になれば一気にそれっぽいネオン街に変わる。
江戸に来て2週間が経ち、落ち着いてきたからこの辺りを少し探索してみようと、まずはここ かぶき町に足を踏み入れた。
風に流されて頬に触れる髪すら冷たくて、マフラーの中にしまいこむ。
銀時が綺麗だと褒めてくれたこの髪は、染めたこともなく、なんなら長さだってあの頃と変わっていない。
ふわり、雪が舞う。
『 ・・・銀時 』
・・・会いたい。
ふわふわと降り積もるそれをみていると、彼の触り心地の良い癖毛を思い出す。
別れを告げられた日も、こんな天気だったっけ。
大好きなまま、離れるしかなかったあの日。
十年経った今でも、忘れたことはない。
『 ・・・って、いつまで引きずってんのよ私 』
向こうはもう、私のことなんて忘れて幸せに暮らしてるかもしれない。
でも、もしかしたら、十年前と変わらない気持ちのまま、想い続けてくれているかもしれない。
結局、何度考えても辿り着く答えは同じ。
もう会えない、会わない。
そう決めた。
もし偶然会ったとしても、今更言えることなんて何も無い。
十年越しに今更、大好きです、なんて 言えるわけがない。
軽く頭を振って、また歩き出した。
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作者名:ちゅぴこ | 作成日時:2017年10月15日 14時