かき氷。 ページ21
Aside
目の前に広がる青。世にいう、海。久しぶりに休みの取れたセンラと一緒に海に来た。─────普通。カップルとかで来て、女の方がナンパされて男が助けて、それからイチャイチャするっていうのが定番であろう。しかし、そんな少女漫画みたいな展開はない。
『遅くない……？』
かき氷を買いに行ってくれると、行ってからだいぶ経ったはずなのに、未だに来ない彼に不思議に思ってそう呟く。そして、不意に女の子がはしゃぐ声が聞こえた。不思議に思って振り返ると、見たことのある背中。──────センラだ。
『……逆ナンとか、マジでウケる』
なんて言いながらも顔は笑っておらず、無表情。遠くで逆ナンされてるセンラにため息をつく。普通、ここで可愛く助けに行くのだろう。しかし、私には彼女らを彼から引き剥がすためになんて言葉をかけていいかわからない。すべて反撃されそうで怖い。それに、あーいう系の女子を前にしたら足が震えたりと、情けないことになってしまいそうで。だから、黙って見てることしか出来ない自分の弱さに思わず顔を顰めた。
｢こんにちは、ご機嫌斜めなお嬢さん｣
突然聞こえた、聞き覚えのある声のそんなキザなセリフ。そして、視界に映る紫は、口角を上げ、色っぽいという言葉がピッタリの微笑を浮かべた。
『志麻くん……？』
訳が分からなくて、譫言(うわごと)のように小さく呟く。すると、隣に座ってもいいかと聞いてきた彼に、了承の言葉を返した。そして、志麻くんが座れるようにシートの端によってスペースを作った。
『何で、いるの？』
最初に質問したのは私。本当は何でいるかなんてどうでもいい。────いや、どうでもいいと言うのは語弊があるかもしれない。 だって、粗方想像できるのだ。きっと、うらさかの2人と来たのだろうと。
｢うらさかの2人と来たんよ。センラも誘って、断られたから３人で来たんやけど。まさかAちゃんとデートとはねぇ｣
ニヤニヤと笑みを浮かべる志麻くんの言葉に、思わず眉間に皺がよった。そして、彼の背中を軽く叩く。すると、痛いと言っておどける彼。
｢……でも、デートの割には不機嫌そうやな｣
そう言って、私を見つめる志麻くん。その澄んだ紫の瞳が、私の心を見透かしているようで。なんだか居た堪れない気持ちになり、顔を逸らした。
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作者名：高瀬その | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/8ef4f72c271/
作成日時：2018年6月26日 21時
